「今日、好きな人ができた」
消失、現出、そして消滅。何故か長門には切なさがつきまとう。
最初に気づいたのは朝倉。
「やっぱり、あと、もうひとつ。…あなた、誰ですか?」
元の長門の記憶を共有し、その感情もデータとして知覚しているが、“他人の日記を読んでいるような”違和感。
時折見せる“有希ちゃん”な表情と仕草。
冷静沈着にボケるかと思えば、簡単に動転もする。
共有する記憶の中に存在する様々な有希。周りの人間と共に自分が作られていくという自覚。そこまでか!?というくらい綾波と被りますが、有希ちゃんのキャラ立ちの良さが二番煎じ感を薄めています。
鮮明さを増す有希ちゃんの記憶。比例して高まる有希消滅の予感とキョンへの思慕。
「嫌だ…消えたくない!」
日曜日。恐らく最後の日。朝倉さんの本気弁当を公園で食べ、図書館脇の公園のベンチで借りた本を読了し、あと心残りがあるとすればひとつだけ…。
無理…と諦めた瞬間、携帯に着信。相手は…キョン。とりとめのない会話の後の一瞬の静寂。
「好き。…私はあなたが好き」
自分の代わりに本を返却して欲しい。告白の返事はどっちであっても未練になるから必要ない。目覚めた時、もうひとりの私はきっと取り乱すから、家まで送って欲しい…。
「ちゃんと言えた。気持ちを伝えられた。これでもう思い残すことはない」
泣きながら夜空に手を伸ばす有希。
「ああ、触れそう…」
勿論、星に手は届かない。
「そこ、どこだ? どこにいる? 今からそっちに行く。だから、もう逢えないような言い方すんな!」
駆け付けたキョンの前にはベンチで眠っている有希。目覚めた時は…。