世代的には原作よりもアニメ版1期の1st派ですが、ルパンのイメージに対するこだわりはありません。
山中貞夫監督は、「百萬両の壺」でそれまでニヒルな剣豪であった丹下左膳を“矢場のヒモ”“お人よし”という駄目人間に変更。原作者の怒りを買い、タイトルに“丹下左膳餘話”という番外編的記号を入れるハメになりましたが、映画史に残る大傑作に仕立て上げました。
要は面白ければいいんです。結果オーライ、勝てば官軍です。
で、下馬評ボロクソ、蓋をあけたら24億越えの中ヒット。賛否は色々…な本作。うーん、ここまで画面との距離を感じた映画、久しぶりですね。
怒りでも失望でも落胆でも勿論満足でもなく…。ただひたすらアパシー。
『始まった…はい…はい…はい…あ、そうですか…終わった』
何と言うか天体望遠鏡で他の惑星の娯楽を覗き見しているような感じでした。
「実写版 ルパン三世(吹替版)」(2014年/北村龍平監督)
多くの人が言及していますが、小栗旬は頑張っていたと思います。アニメのイメージを残しつつモノマネに堕していない。孤高さと非情さが足りませんでしたが、ギリギリOKな匙加減でした。
あとの人たちは好き好きでしょう。個人的感想としては、次元にはクールさが、五ェ門には殺気が、銭形には意固地な正義感が、そして不二子にはお色気が絶望的に足りなかったとは思いましたが…。
問題は脚本と演出。無駄に大風呂敷、無駄に派手。辻褄なんか知った事か、とばかりにタメの無いアクションが矢継ぎ早に繰り出されるいつもの北村節。
泥棒の互助会だか親睦会だかみたいな組織にルパンが所属しているのもなんだかなぁ。
敵側に『北斗の拳』のザコキャラ(出てきて30秒で「ひでぶ!」とか「あべし!」とか言うタイプ)みたいなのがいるのですが、こういう頭の悪そうな顔がひとつあるだけで気分が萎えます。
ついでに言うとこいつとセットで出ているビッチ系も(2009ミス・インターナショナル日本代表だそうですが)知性を感じなくて嫌(←敵ってのは主役を凌駕する頭脳派であってほしいという個人的願望)。
K国人の仲間(メカニック担当の新キャラ)がいるってのもちょっと…。
メカニックのバックアップを受けながら難攻不落の要塞に侵入ってのはとても現代的ですが、これじゃ『ミッション・インポッシブル』じゃん。
で、後方支援は全部こいつが担当するのかと思えば、クライマックスでいきなり妙な助っ人(天才ハッカー)が飛び入り参加してくるし(タイの有名なコメディアンなんだそうです)。
ライバルのような立場の台湾人もルパンと張るにはひたすら小物。
フィアットとか赤ジャケとかアニメ気配りな小道具も出てきますが、そんな事より、斬鉄剣は銃と対峙したら弾丸を、車と対峙したら車体を真っ二つにするという基本を守ってくれ。そうして初めて「また無駄なものを斬ってしまった」という台詞が生きるんだから。
突っ込み所満載という表現は、突っ込む事も楽しみのひとつ、という場合に有効な褒め言葉であって、突っ込む気力も興味も沸かないという時には使いません。
あ、吹替版というのは日本人キャストも含めて吹替になっているバージョンという事です(元は英語台詞とかだったのでしょう)。当然、日本人キャストは本人がアテていますが、リップシンクがズレていて違和感半端無いです。
役者はこのままで構わないので、ちゃんとした脚本とちゃんとした演出で続編撮ってみてください。