「恐怖ノ黒電話」(2011年イギリス)、「恐怖ノ黒洋館」(2012年カナダ)に続く“松竹・恐怖ノ黒○○”シリーズ第3弾。今回はスペイン産。
「恐怖ノ黒鉄扉」(2013年/カルロス・アロンソ他全12名監督)
黒鉄扉は“くろてっぴ”ではなく“くろとびら”。色々と無理のある邦題です。本編内容との整合性も限りなくゼロ。
69分という短距離走でありながら監督が12人!(バルセロナ映画学校出身者の共同監督作なんだそうで)。
ホラー好きの「あれが撮りたい」「これも撮りたい」なアイデアを無理くり繋いでいるので、よく言えば賑やか、悪く言えばまとまりのない一編です。
“俺はゴアシーンに凝りたい”“ここはPOVで行こうよ”“とにかくファイヤーだろう”みたいなノリだったのではないでしょうか。
事の発端は1998年12月28日。とあるホステルで一人の青年が凄惨な死を遂げます(ボイラー室に閉じ込められて蒸し焼き)。
公式サイトやAMAZONでは“エイプリル・フールの惨劇”みたいな紹介の仕方をしていますが、正確には『幼子殉教者の記念日』です。
聞き慣れない記念日です。これは救世主(キリスト)がベツレヘムで生まれた、という噂を聞いたヘロデ王が「なぁにが救世主じゃ! こうなったら殺られる前に殺ったるわい。ベツレヘムのガキ全員ささらもさらにしたれや!」と言ってベツレヘムの2歳以下の子供を皆殺しにしたという故事に因みます。
この子供たちがイエスのために命を落とした最初の殉教者、という訳です。
ちょっとしたイタズラ心が大惨事、という発端は『テラートレイン』や『バーニング』を思わせます。
時は流れて2013年12月28日。
暖冬で雪が降らずスキーが出来ないどころか道に迷った若者8名が、偶然見つけた閉鎖ホステルでヤケクソパーティ(う~ん、お約束)。
ガソリンスタンドのおばちゃんが「ホステルに泊まるって? あそこは危険だ。やめときな」(伝統芸能的お約束)。
後は、あんなホラーやこんなホラーのオマージュ、パクリ、リスペクトが続きます。
これは新機軸だ!と思ったシーンがひとつ。
滑って転んで頭かち割った姉ちゃんが、陥没した頭蓋に手を突っ込んでぬっちゃぬっちゃとかき回し、エクスタシーの中で絶命する所(正に“逝った…”)。
特に何が映る訳でもないのですが、下手なゴアシーンよりよっぽとキます。
容易に想像がついてしまうオチはいささか芸が無いですが、短時間逃げ切りホラーとしてはまずまずなのではないかと思います。
あ、あと、ホラーで『山の魔王の宮殿にて(In The Hall of theMountain King)』は最早定番? 「処刑山 デッド卍スノウ」でも景気よく使っていましたが…。