『あれ? 言ってなかったっけ? こいつはな、人の生命力で動くんだ。だから、お前らは闘いの後、必ず死ぬって事だよ…』
過酷過ぎるにも程がある試練と運命と十字架を背負わされた少年少女の物語。最高峰はジョージ秋山先生の『ザ・ムーン』(次点、尾瀬あきら先生の『とべ!人類』)だと思っておりましたが、こんな作品があったんですねえ(完全ノーマークだった…)。
「ぼくらの[北米版DVD-BOX]」
(2007年4-9月放送。全24話/森田宏幸監督)
夏休み。自然学校に参加していた15人の男女は海沿いの洞窟でココペリと名乗る男と出合います。
ここで新しいゲームを作っているんだ。巨大ロボットを操って地球を守る話だ。よかったらテストプレーヤーになってくれないか。
面白そう。やるやる。ちょっとした儀式だよ、と機械に手をかざして名前を言い、契約を交わしていく15、いや14名。
気が付けば洞窟の外。夢? 集団で? まさか…。
訝る彼らの前に現れた巨大なロボット。対峙するように現れるもう一体のロボット。
ゲーム…じゃない。リアルだ。
ロボットの内部に強制転送される15人。彼らをサポートするのが、犬のぬいぐるみのような顔をした“コエムシ”。
恐らく、『ザ・ムーン』の糞虫→肥虫→コエムシという発想でしょう。やがて現れる邪悪な性格は『まどか☆マギカ』キューベエのプロトタイプかもしれません。
コクピットには、各自が愛用している椅子を模倣したものが円形に置かれ、ルーレットのように回転。正面に止まった椅子の持ち主が次のパイロットになるというルール…正にロシアンルーレット。
敵の数は15。戦いに勝てば地球は無事。負ければ星ごと消滅。そして、勝敗の如何に係らず、パイロットはその命を失う。
地球を救って死ぬか、地球を道連れに死ぬか。守るべきもの、戦う大義はどこにある?
各々が抱える問題。トラウマ。戦って死ぬという運命をどうすれば受け入れられる? 死にたくない。
翻って根本的な疑問。何故戦う? 敵は誰だ? どこから来た? 彼らにも戦う大義があるのか? まさか敵の中にも…。
子供たちの心情をよそに介入してくる大人たち。国防軍。政治家。研究者。為政者。
子供たちだけの箱庭で話が完結しないところが良い。
本当にデカイ者同士が戦ったら、近接戦によるドツキ合いしかできない、というバトル描写が妙にリアル。
石川智晶が歌うOP“アンインストール”が琴線触れまくり。
“♪ 細い身体のどこに力を入れて立てばいい?”
という本音と
“♪ 恐れを知らぬ戦士のように振る舞うしかない”
という建前のどうしようもない距離感が涙を誘います(歳だなあ…)。
ここ10年のアニメ主題歌では1、2を争う名曲だと思います。
北米版DVD-BOXは4枚組(各6話収録)で5,000円前後。