『こういう内容だったとは…。乗馬の話だと聞いていたが…』
『馬に乗る女の話だ。ここはもう乗れなくなるシーン』
入り口には“SILENZIO(録音中。静かに)”のサイン。ここは、
「バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所」
(2012年/ピーター・ストリックランド監督)
イタリアのサウンド・スタジオに招かれた英国人音響技師(トビー・ジョーンズ)が、B級ホラー映画「呪われた乗馬学校」のサウンド・エフェクトを担当していくうちに、精神の均衡を崩していく…
…というお話の表層をなぞると、この映画は酷く退屈です(一度寝落ちしました)。
音効マンが主役と言うと、デ・パルマの「BLOW OUT(ミッドナイトクロス)」とかを思い出しますが、ああいうサスペンスフルな展開はありません。
映画作りの裏側を覗くトリビアチックな内容でもありません。
言葉もロクに通じない異世界でひたすら拷問シーンに音を付ける日々。現実感の希薄な白昼夢。
どちらかと言うと「バートン・フィンク」「裸のランチ」「イレイザーヘッド」と同じ箱。
イギリスからの飛行機代の清算がたらい回し。ようやく経理担当者を捕まえたら、
『この領収書の航空便は存在しない(から運賃は払えない)』
何度も挿入されるサイン“SILENZIO”は「マルホランド・ドライブ」のキーワードでもありました。
エンタメ性の低いリンチ・リスペクトな不思議時空だと思えば、楽しみ方に厚みが出るかも…。
呻きと悲鳴。人間効果音はちょっと不気味。