リチャード・レナード・ククリンスキー。
60年代~80年代に掛けての20年間で100人以上(一説によれば250人以上)を殺害した職業暗殺者。
愛妻家で子煩悩。善き夫であり善き父であり善き友人であり善き隣人。
殺した相手は犯行時間を誤魔化すため一旦冷凍。しばらく保存した後、自然解凍して遺棄。用意周到な手口からついたあだ名が、
「THE ICEMAN 氷の処刑人」(2012年/アリエル・ヴロメン監督)
ククリンスキーの殺しはあくまでビジネス。よくある殺しの美学に対するこだわりのようなものはありません。
時と場所に応じて最も効率的な方法を選択。
ある時はナイフで後から、ある時は紐で絞殺。またある時はシアン化合物スプレーをシュ!
長身と腕力を活かしたネックハンギング・バックブリーカー。
銃も状況に応じて使い分け。絵的に面白かったのはデリンジャー。
長身で手がデカいククリンスキーと小型拳銃デリンジャーの取り合わせが絶妙。しかも、ククリンスキーが持っていたのはデリンジャーの代表格レミントン・ダブル・デリンジャー(全長約12.5cm)ではなく、コブラアームズのビッグボア・デリンジャー(約10cm)。
『祈る時間をやる。神様に俺を止めさせてみろ』
掌に納まるどころか、トリガーに指掛かるんかいな?な尺度でした。
ドラマであれば、一般的小市民が家族のために冷徹非情な殺し屋に…という建てつけになるのでしょうが、ククリンスキーは元々殺しの素養十分適性バッチリな男でした。
度胸試験の得物はColt Detective Special。 以来、殺しの道をひた走り…。
幼い時から父親の虐待に晒され(そのため兄は死亡)、弟と犬や猫を焼却炉に投げ込んで燃える様を観察するなど色々と面倒な性格に。
ただ声を掛けてきただけのストリート・ギャング6人を物干し竿でメッタ打ちにしたり、ビリヤード場で口論になった相手をキューでメッタ打ちにして殺したり(14歳で殺人デビュー)。
因みに弟ジョセフは、25歳の時に12歳の少女を強姦殺人して死ぬまで刑務所。
最後は囮捜査に引っかかる形で逮捕されるのですが、警察はかなり時間を掛けてククリンスキーを内偵していたようです。捜査視点での描写があれば、もう少し客観的なククリンスキーの人物像に迫れたのではないかと思います。
ククリンスキーが一目惚れし妻にする女にウェノナ・ライダー(久しぶりに見た)、ククリンスキーを殺し屋に仕立てるマフィアにレイ・リオッタ(久しぶりに見た)、弟ジョセフにスティーブン・ドーフ(久しぶりに見た)。そしてディスコで流れていた曲がブロンディの「ハート・オブ・グラス」(久しぶりに聴いた)。
ククリンスキーを演じたマイケル・シャノンはこの後、ゾッド将軍に出世しています。