
“地獄の門は3つある。ひとつは砂漠に、ひとつは海に
そしてもうひとつはエルサレムに”
という大風呂敷に続く1972年の悪魔祓い記録映像。ハッタリ満開な前口上はまずまずだったのですが…。

「エルサレム」(2015年/ドロン・パズ監督)
大好きだった兄を事故で亡くしたレイチェルは友人エマと傷心旅行。テルアビブへ行く予定でしたが、機内で知り合った自称考古学研究家のケヴィンの薦めでエルサレムへ。
前半はエルサレム観光BOOK。何と48分間何も起こりません(因みにランニングは95分)。
まあ、現時点でエルサレムは安全度レベル1(十分注意)ですが、周辺地域はレベル3(渡航中止勧告)。デンジャーゾーンを覗き見できるという意味では価値ある映像かもしれませんが…。
そして全編に渡ってスマートグラスのプロモーション。
本作はスマートグラスを通して観た映像で構成されるPOVなんですね。「クローバーフィールド」の進化形(あくまで“方法論”の)という感じです。

常にカメラが回っているという事の言い訳としてはよく出来ています。ご丁寧に通常のメガネの入ったバッグをひったくられてしまい、スマートグラス(プレゼントしてくれた父の計らいで度つき)を掛け続けなければならない、というダメ押し設定も用意。
顔認識による相手情報とか、冒頭の記録映像のダウンロード画像とかの情報も表示されるので便利ではありますが、やっぱり見難い(ホント、POVには飽きました)。

何よりがっかりだったのは主人公が見た目も性格も残念無念だった事(この娘の主観なので滅多に顔は映らないのですが…)。友人はセオリーに則りイケイケ系。こちらもちょっと。

今回、勉強になったのはエルサレム症候群と呼ばれる突発性精神疾患。
エルサレムを訪れた者が自分は神の子あるいは預言者と信じ込んだり、モーセやマリアを見たと信じる精神的症状。多い年には年間200人の旅行者がかかるそうです。
どうもヤバイ事になっているっぽい事に気づいたケヴィンが興奮してまくし立てると、ホテル関係者が手際よく取り押さえて精神病院へ。
「観光客にはよく起きる事だ。心配いらないよ」
…そ、そうなのか?(何か地獄の扉が開くよりもこっちの方が嫌なんですけど)
映画として観たら面白くも何ともありませんが、“異文化交流に於けるスマートグラス活用法(応用編)”だと思えばそれなりに楽しめると思います。