月面鉱物採掘基地サラン。作業員1名。サム・ベル(サム・ロックウェル)。契約期間3年。
通信機器の故障により地球との直接交信は不能。木星経由のビデオレターが届くだけ。話し相手は自分。そしてお世話係コンピュータ、ガーティ。
スマイルマークが感情表現のガーティ。声はケヴィン・スペイシー。
鉱物資源ヘリウム3を採取して地球に送る。プログラムされた退屈な日々。
だがそれももうすぐ終わる。あと2週間で3年の契約期間満了。地球には妻テスと娘イヴが待っている。
と、ここまでの設定だけですれっからしのSFファンはあれこれ深読みをすることでしょう。実はもう地球は○○してるんじゃないかとか、全ては主人公の○○なんじゃないか、とか。
そこかしこにSF映画のオマージュやらリスペクトやらが散りばめられています。
「2001年宇宙の旅」「惑星ソラリス」「ソイレント・グリーン」「サイレント・ランニング」「アウトランド」etc.
どれだけ引用しても嫌味にならないのはサム・ロックウェルの演技と手作り感覚溢れる“特撮”と作り手の誠実な姿勢の賜物。
六輪駆動の月面作業車。グッとくるデザインです。
監督はデヴィッド・ボウイのご子息だそうで。方向は違えど継承される才。
『俺たちはプログラムじゃない。人間だ!』
ネタが分かった後の二順目は切なさ2割増。SFミステリーの良作だと思います。
「月に囚われた男」
(2009年/ダンカン・ジョーンズ監督)
唯一、難点を挙げるなら、ハングルの混入でしょうか。