デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

メッサラ救済の物語。 ベン・ハー【2016年版】

イメージ 1

 

1907年の短編と2003年のアニメを含め都合5度目の映像化。多くの人が想起するのは1959年のワイラー版でしょうが勝てる訳がないので(出来を)比べるのは無意味。

 

いやもう勝ち負けで言ったら、冒頭にミクロス・ローザのファンファーレがない時点で不戦敗なのです。

 

ここは視点や設定の違いを楽しむのが吉でしょう。

 

ベン・ハー
2016年/ティムール・ベクマンベトフ監督)

 

最大の設定変更はメッサラ。

 

何と本作ではメッサラとベン・ハーは親友ではなく義兄弟。とある事情でユダヤ人ハー家に引き取られたローマ人孤児。

 

しかも、祖父がマルクス・ウァレリウス・メッサッラ・コルウィヌス(ブルータスに協力し、ユリウス・カエサルの暗殺に加担した共和主義者)。

 

ローマ人としては恥ずべき家系。ハー家の中においても家族同然(即ち家族ではない)という疎外感。名も財もない持たざる者。

 

ローマ人として汚名を返上し功名をあげるため、ゲルマニア討伐に参加、一兵卒として戦地へ。


イメージ 2

 

ここでピラトに認められたメッサラはローマ軍司令官となってエルサレムに凱旋…ってこれ完全にメッサラ主役じゃん(「ジャイアンツ」のジェームス・ディーンかよ)。

 

後は大筋ワイラー版と一緒。ただし、クインタス・アリウスは出てきません。ベン・ハーは単独でガレー船から脱出し、辿りついた浜で族長イルデリム(何の役を演っても本人にしか見えないモーガン・フリーマン)に出逢います。

 

クライマックスは勿論、大戦車競争。それなりに迫力ある画面にはなっていました。


イメージ 3

 

特にお気に入りはクラッシュした戦車の馬が客席に飛び込んで片っ端から観客蹴り上げるシーン。パニック・イン・スタジアム(笑)。

 

配役的には、キリストが喋りすぎ(兵士もたじろぐ尊厳とか感じられない)とか、ピラトが頭悪そう(もうちょっと賢者に見える人にしてほしかった)とか、モーガン・フリーマンのナレーションがうるさい(本来、映像と演技で表現すべきところを全部言葉で説明しちゃう)とかありますが、手堅くまとめていた(212分→123分)のではないかと。


イメージ 4

 

で、問題のラスト。若い時に観たら「ヌルい」の「甘い」の散々文句垂れたと思いますが、この歳になると「まぁこういう締めもいいんじゃないかな。だって主役メッサラだし」という気分にはなります。

 

ワイラー版観ていない人はまずワイラー版(できれば1925年のサイレント版 も)を観てくださいませ。

 
★サイレント版はこちら。


おまけ
イメージ 5
戦車競争のエジプト代表がハゲだったのはユル・ブリンナー@十戒リスペクト?
 

イメージ 6←ランキング投票です。よろしければワンポチを。