『これが、どういうことか分かるかね。イエスは、彼が身を賭して闘っていたはずの“体制”に、彼自身がされてしまったのだよ』
山田正紀の商業デビュー作「神狩り」の一節です。昇り詰め己を見失い破滅したカリスマの悲喜劇。
「ピープルvsジョージ・ルーカス」
(2010年/アレクサンドレ・O・フィリップ監督)
世界を熱狂の坩堝にした「スターウォーズ」オリジナル三部作。これに泥を塗った(とファンは思っている)特別編三部作、そして何もかもぶち壊した(とファンは思っている)エピソードⅠ~Ⅲ。
溢れかえりむせ返るオリジナル愛。失望と落胆の全てはルーカスに対する怒りとなって…。根底にあるのが妄信的純愛であることが話を一層ややこしくしています。
素晴らしいのはファンがルーカスへの“想い”を様々な方法で“表現”していること。
寸劇、パロディ、ポエム、歌、青年の主張e.t.c.
怪我をしたルーカスを介抱するふりをしながら拉致・監禁して、スターウォーズのシナリオを書き直すよう脅す「ミザリー」のパロディには笑かせてもらいました。
「ファントム・メナス」の予告編を観るためだけに長蛇の列。そして期待度MAXの本編。熱病の如きエネルギーはオープニング・タイトルが出た瞬間頂点に達し…ゆっくりと下降、エンドクレジットが出る頃にはお通夜の如き静寂が。
俺たちが観たかったのはこれじゃなーい!
気持ちは分かります(笑)。
私も特別編はゴミだと思っています。特に「ジェダイの帰還」とか言うタイトルになったアレ。マジで返してください、イウォーク・セレブレーション。
EPⅠ~Ⅲは何をどう言い繕ってもワクワクしない(イライラはする)んだから仕方ありません(本場でもジャー・ジャー・ビンクスは嫌われていたんだ)。
これ、日本でも同じパターンの映画撮れますね。
「ピープルvs押井守」「ピープルvs富野由悠季」「ピープルvs庵野秀明」
余談ですが、昇りつめて破滅するカリスマって好きな題材(「カリギュラ」「スカーフェイス」「F.I.S.T.」)なので、是非、ルーカスが非業の死を遂げたらその生涯を映画化して欲しいと思います。