『もう友達は君だけだ。独りにしないで』
『神に誓って一緒にいるよ』
DVDのキャッチコピーは“『アザーズ』『インシディアス』に続く衝撃のオカルトホラー、遂に日本上陸!”。
嘘です。オカルトではないですし、そもそもホラーでもありません。
これは時の回廊がもたらす奇蹟の物語。
「マザーハウス 恐怖の使者」
(2013年/アレハンドロ・イダルゴ監督)
南米。ベネズエラ。キリスト教の町。ドゥルセは夫と子供二人の家族4人でつましい暮らし。
ある夜、夫が殺され、息子が闇に囚われた。夫殺し、息子殺しの罪状で終身刑を言い渡されたドゥルセ。
30年後、老齢な囚人に対する特赦で、残り刑期を自宅で過ごすことを許されたドゥルセは30年前の悪夢と対峙する…。
あの夜、ここで何が起きたのか。
前半の建てつけは確かにホラーの定石通り。しかし、中盤以降、お話は思わぬ方向に転がり始めます。
終盤、3つの(いや正確には4つの)時間軸が交錯する(そういう編集をしている、という意味ではなく、本当にひとつの家の中で同時に4つの時間が進行する)展開には唸らされます。
まるで最後の数手で黒一色だったオセロが一気に白一色に反転していくような雪崩式伏線回収。
嗚呼、そういう事だったのか。
30年前、この家で何が…。
タイムパラドックスの常でどうしても矛盾や齟齬は生まれますが、そんな事はどーでもいいです。
重箱の隅をつつくより、この優しさに身を委ねる方が遥かに幸せですから。