『ほら、SFに良くあるだろう?形態の差がなかったら、世界はもっと平和になってるって言うの』
『…そうじゃないの?』
『嘘だね。国家、民族、髪の色、肌の色、背丈の高い低い、太っている痩せている、なんでも違いがある限り人はいがみ合うのさ。外見が全部同じになったとしても、次は服装の良し悪しで諍うよ。これはどうやっても治らない。人間の性だね』
≪差別≫はこの作品に流れる大きなテーマですが、ここまでストレートに、しかも、本編と関係なく(Bパートにはレギュラーが一人も登場しない)描くとは。
スタッフの力の入れ具合が分かる異色回でした。
「セントールの悩み/第9話」
(2017年9月3日深夜BS11放送/球野たかひろ演出)
Aパート「世間で偉人って言われている人の苦悩って。」はジャングルで行き倒れていた所をフランス人宣教師に拾われた両棲類人(カエルくん。フランス名ルソー)のお話。
哺乳類人の教育を受けたルソーは両棲類人初の高等師範学校生となり、現在はコングロマリットの会長に。
ビジネスで訪れた企業の老会長と握手しようとした際、「手袋をはめたままは無礼ではないかな」と窘められたルソー。両棲類特有のヌルヌルを気にしての事でしたが、相手も譲らず。手袋をとって固い握手。
商談後、気を利かせてウェットティッシュを持ってきた秘書を静かに一喝。
『私の手は汚れてなどいないぞ』
このシーンでちょっと涙腺緩みかけました。
両棲類人のコミュニティ(先進国である哺乳類人に搾取される発展途上国)問題を挟んでBパート「世間で偉人って言われている人の人生って。」
いきなり戦火。蹂躙され虐殺される国民。どう見てもナチス。辛くも銃殺を逃れた翼人の少年は他の人々と共に列車に押し込まれ有刺鉄線に囲まれた収容所へ。
『…どうして?』
『お前は良い奴だからな。良い奴が残ればそれだけ世界も良くなる』
やがて解放軍による収容所解体。人馬は長耳人の手で“奇妙な果実”に。翼人の少年も人馬の仲間と看做されて吊るされようとしますが、解放軍の兵士がこれを阻止。