始まりは音。
マンションの一室で聞こえる畳をホウキで掃くようなシュ…シュという音。
縦横の繋がりのない他フロアでも怪異が。しかし当該部屋はもとよりマンション全体で見ても自殺者など記録にない。ではマンション以前の土地か。
という具合に怪異の原因を調べてみたら、ひとつの祟りにぶつかり、その原因を手繰ったら更に大きな祟りが。
やがて関係ないと思われた怪談の数々がひとつに繋がり、“喋っただけで祟られる”“聞いただけで祟られる”巨大な怨みの巣窟へ。
「残穢【ざんえ】 ―住んではいけない部屋―」
(2015年/中村義洋監督)
読者からの投稿を元に現代の怪異を紡いでいく小説家「私」(竹内結子)。彼女の目に留まった一通の封書に綴られたマンションの異音。
マンション建設以前の地図を取り寄せ、駐車場→空き地→民家と遡り、地元民を探して聴き込み、かつてその地にあった“事件”に、更にそれ以前の“怪異”に辿りつく。
シュ…シュという音は首を括った女性の着物の帯による衣擦れの音でした。しかし、これは祟りの連鎖を手繰る旅の出発点に過ぎず…。
怪談のルーツを探るという新しいアプローチによって生まれたホラー・ミステリー。
貞子や伽耶子のような強烈キャラは登場しません。時代も場所も異なる小さな怪異が繋がり重なりある1点に収斂される推理劇のカタルシス。
こけ脅しな演出のないジワっと来る恐怖。
そのまま終わってくれれば100点満点だったのですが…。
地味ぃな展開に耐えられなかった人がいたようで、最後の最後にやっすいJホラーの残滓のようなハッタリ演出かまして全部台無しにしてしまいました。
あぁ勿体無い。ラスト2分の展開を決めた(指示した)のは監督か脚本家かプロデューサーか。いずれにしても犯人は恐怖の本質を何も分かっていないお馬鹿さんです。