(これから僕が相手をするのは空気だ。押しても引いても叩いても何も無いあの空気。学校を取り巻く空気。右に習えの生き方は楽でいい。悪いことの判断を全部自分でするのはカロリーを使うし、自分の意志を持つと否定された時に傷付くことになる。その点、みんなと一緒であれば安心安全でいられる。見たくないものを見ずにいられる。考えたくないことを考えずにいられる。全部他人事で済ませられる。だけど…みんながそうしてるからってだけで、誰かを苦しめていいなんて理屈はない。みんながそうしてるから、みんながそう言ってるから…それが正しいとも限らない。大体みんなって誰だ?)
この後、上條当麻なら『それでもみんなが桜島麻衣を無視するというのなら、そのふざけた幻想を今すぐここでぶち壊す!』と続けるでしょう。
比企谷八幡なら『本当に世界を変えるとはどういう事か教えてやる!』とつぶやくでしょう。では本作主人公・梓川 咲太(あずさがわ さくた)は…。
「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない/第2話・初デートに波乱は付き物|第3話・君だけがいない世界」(2018年10月13日・20日BS11放送/増井壮一監督)
桜島麻衣の記憶は多くの人から消え去り、遂には実の母にも視認されなくなり…。
芸能界復帰のスクープ取材を確約した女子アナ・南条文香の記憶からも…。
『握っていいなんて言ってない』
『僕は握りたい』
『仕方ないわね。今だけ特別よ』
私、咲太のグイグイ行く性格、大好きです(意外といません、こういうキャラ)。
桜島麻衣透明化の原因、それは麻衣を空気のように扱ってきた峰ヶ原高校の空気。トリガーは睡眠。
『認識と観測がキーになっているのであれば人の意識が働かない睡眠が記憶を無くすきっかけになっていると言う考え方は私なりに納得は出来る』
偶然にも前夜一睡もしなかった咲太と双葉理央(ふたば りお)だけに桜島麻衣の記憶が残っている事から理央が導き出した仮説。つまり…
眠ったら忘れる。
一睡もせず迎えた中間試験初日。前夜眠った双葉は…。
『お前、覚えてるか?』
『は?何のこと?』
『いや…いいんだ。じゃあな』
『お前の仮説は正しかったわけか…すげー燃える展開だな』
ドリンク剤飲みまくり、フリスク齧りまくって睡眠を拒絶する咲太。勉強を教えると言って咲太の家にやってきた麻衣は…。
『元々私は一人だったんだから、大丈夫よ。咲太に忘れられるくらいなんでもない。それでも…今日までありがとう。それと…ごめんね。お休み咲太…さよなら』
コーヒーに忍ばせた睡眠剤。翌朝、咲太の記憶から綺麗さっぱり消えた麻衣。
記憶があるうちに自分に宛てて書いた文章も効を奏さず。このまま忘れてしまうのか。思い出せ、咲太。根性見せてみろ。
観ているこっちにも力が入ります。
咲太同様、双葉も記憶のあるうちに咲太宛のメモをしたためていた。
『全校生徒の無意識を梓川の愛が上回ればいい』
観測という愛情表現。それはとても中二的な…。
観測と中二の先輩、鳳凰院凶真なら最後にこう叫ぶでしょう。
『よく聞けマヌケ共!シュレディンガーの箱は開いた!悔しがるがいい!恐れるがいい!この鳳凰院凶真、貴様等にも運命にも負けることはない!』
記憶は恋愛に欠かせないアイテムですね。次回から新展開。こちらも楽しみです。