(好きって暴力的な言葉だ)
(好きは束縛する言葉)
『侑、好きだよ』
(これは束縛する言葉)
毎回、各人の心情を捉えた演出には感心しておりましたが、今回は絵コンテがあおきえいという事もあって、脚本、コンテ、演出が見事に絡み合った名編となりました。
「やがて君になる/第6話・言葉は閉じ込めて|言葉で閉じ込めて」
(2018年11月9日深夜BS11放送/渡部周演出)
7年前に途絶えた文化祭での生徒会劇復活にこだわる七海。
7年前。生徒会長は七海澪。七海燈子の姉。文化祭の直前、交通事故で死亡。澪が死んだことで生徒会劇は中止。以後、封印。
誰からも好かれ、常に皆の中心にいて、教師からも頼られた姉。その姿をトレスすることに全てを賭けてきた燈子。
『私がお姉ちゃんの代わりになろうと思ったの。私がお姉ちゃんみたいに振る舞うとみんな喜んでくれる。特別だって言ってくれる』
自分の言うことなら耳を傾けてくれると信じて、劇の中止を提案する侑。
『そこまでしなくたってそのままの先輩を受け入れてくれる人は先輩が思うよりいっぱいいるんじゃないかな? そういう先輩の方が好きっていう人もきっといますよ。だって…』
しかし、燈子の答えは、
これまでの甘えた臆病な燈子ではない、たとえ他の全てを失っても絶対譲れない全身ATフィールドな氷の一言。
この時の演出、河川の飛び石を渡って侑から距離をとる燈子、燈子が振り向く時にアングルを燈子の後頭部に固定してカメラごと回転させる撮影、姉の話をする時は川面に映る姿を捉える撮り分け。
そして、飛び石をつたって一歩一歩燈子との距離を縮めていく侑。駆け引きと折り合い。
更にEDを挟んだCパートでBパートラストを視点変えでリフレイン。サブタイの出るタイミングまで含めて誉め所しかない素晴らしさでした。
しかし今回私の琴線を激しくかき鳴らしたのは、侑のクラスメイトの叶こよみ。
自作の小説を応募前に侑に読んでほしいと頼んできた作家志望の女の子。
舞台劇の脚本に興味はあるかと侑に聞かれた時の反応。
この時のこよみの眼。まっすぐで真摯で真剣で。
嗚呼、この子はちゃんと将来の自分の姿を描いているんだなあ…。
こよみの書いた小説、1ページ目だけですがちゃんと画面に映っておりました。多分、純文学です。ペーテル・ペーテルゼンなる人物に対する考察と交流に関する記述。
勝手にファンタジーのようなものを想像しておりましたが、あにはからんや硬派でした。
この子だけが依存のない世界で自分の脚で立っているような気がします(彼女の小説、読んでみたい)。