
『あぁすまん。…ありがとう』
『俺はゴブリンスレイヤーなんざ気に食わないが報酬が出るんでな』
『まったく素直じゃない奴め。言えばよかろうお前の田舎に出たゴブリンを退治したのがアイツだからと』
ホント皆、素直じゃないですね。今日もギルドはツンデレ祭り。
牧場の裏手に広がるゴブリン斥候の足跡。統率力に特化した変異種“ロード”に指揮されたゴブリンの大群がやってくる。
襲撃は恐らく今夜。諸侯や国に助けを求める時間は無い。洞窟ならともかく平地の野戦で100を超すゴブリンをひとりで迎え撃つのは不可能。
『逃げろ』―簡にして潔、必要にして十分な指示。しかし牛飼い娘はこれを拒む。
『だって…2回目はやだもん…。
君が帰って来られるところ、また無くなっちゃうじゃん』

『そんな顔するな』
心は決まった。牧場も牛飼い娘も死んでも守る。必要なのは助っ人。ギルドに声を掛けるも反応は鈍い。
口火を切ったのは槍使い。
この台詞にハイエルフはむくれますが、これはあからさまに助け舟。これまで折りに触れて槍使いは良い奴エピ(自力で武器を取り戻した新参冒険者を祝い、ゴブスレさんのために水の街に小麦粉を届け、素顔のゴブスレさんに気付かず気さくに話しかけるなど)を重ねているので、むしろ彼の優しさが際立ちます。
ゴブスレさんが用意する報酬は「全て」。
『俺の持つもの全てが報酬だ。俺の持ち物、俺の裁量で自由になるものだ。
俺の装備・財産・能力・時間 そして…』

『命か?』 『そうだ 命もだ』
「バイオレンスジャック/関東鬼相撲編」の海堂猛志を思い出してしまいました。
ツンデレ軍団が照れ隠しの報酬(ハイエルフは一緒に冒険、ドワーフは火酒を樽で。リザードマンはチーズとアイスクリン)を口ぐちに要求。受付嬢さんが奔走してギルドからも報酬が。やがて巨大な冒険者パーティ“ゴブリン討伐隊”が誕生。

もはやゴブリン・ロードさんに同情するレベルのハイスペック軍団です。
どー見ても100以上いるゴブリン軍団ですが、相手がゴブリンならゴブスレさんは紛う事なき銀等級。生態を熟知した作戦でゴブリンのエグイ戦法を次々撃破。

雑魚を薙ぎ倒したら、これまで中ボス、ラスボスだったシャーマン、ホブ、チャンピオンが複数でご来場。向こうもオールスター総力戦。

『こっから先はベテランの戦場だ!腕に自信がない奴は引っ込んでな!』
槍使いと重戦士の安定感が半端ありません。
状況不利と見たロードは遁走。しかし、その前に…。
『そういえばあの人はどこに?』
『あら? 彼が 誰だか 知っている でしょ?』
『えぇ。決まってるでしょ』

『ゴブリンをスレイに行ったのよ』
次回、最終回!
※昨夜、yahooブログのメンテが入ったのですが、メンテ中(0時くらいから8時くらいまで)の訪問者数がカウントされておりません。
yahooブログ、使い勝手はいいのですが、メンテの度に不具合が出るのが玉に瑕でございます。

