Death to any other Mother.
『それ以外の母には死を!』
オリジナル版を形作っていた「極彩色」「ハッタリ上等」「禍々しい音楽(サーカムサウンド)」「思わせぶりだが実は意味の無いカット」「直接生理に訴えるゴア描写」はここにはビタ一文ありません。
ありませんが、それは予告観た時から周知の与件。
そもそもアルジェントと同じ土俵で戦っても勝ち目なんかありません。
なので、いかにオリジナルの要素を残しつつ、あさっての方向に横っ飛びするかがある意味見所、期待の寄せ所でしたが、果たして…。
「SUSPIRIA サスペリア」
(2018年/ルカ・グァダニーノ監督)
時間軸はオリジナル同様1977年ですが、冷戦下という時代背景を色濃く反映しています。
舞台もオリジナル同様ドイツですが、フライブルグからベルリンに。ここにアメリカからやって来たスージー・バニヨンが魔女の宴に巻き込まれ…というお話の骨子は変わらず。
冒頭の色彩落としたド田舎風景がいかにもヨーロッパな感じで「木靴の樹」とか「旅芸人の記録」を観ているような錯覚に…。
ここからタイトルクレジットに入るのですが、地下鉄の案内板にSUSPIRIAの表示を持ってきたのには唸らされました(見逃しちゃった人、多かったのでは?)
スージーが入るのはバレエ学校ではなくコンテンポラリーダンスアカデミー(カリスマ振付師役で「コンスタンティン」ガブリエルのティルダ・スウィントンが)。
なので「サスペリア」というよりは「オール・ザット・ジャズ」+「レガシー」な印象。
序盤でクロエ・グレース・モレッツが顔を出しているのですが、色彩薄く印象薄く見せ場なく。ちょっと残念。
スージーのダンスに呼応して、別場所にいる女生徒の体がひねってくねって最後には伊吹吾郎に背骨折られた悪代官みたいな体勢になるのはGOODな演出。
魔女ですからね、相手は。直接的なナイフ攻撃よりは遥かにそれっぽいです。
曇天・雨・雪の中、モノトーンで綴られる静かな物語は、オリジナルとは接点ゼロの別物ですが、「これはサスペリアなんだ」と言い聞かせないと2時間半が長すぎるというジレンマ(笑)。
で、ようやくたどり着いた終盤に驚きの一幕。
何とスージー(ダコタ・ジョンソン)がイモトアヤコに!
勿論そういう意図がある訳は無いのですが、一度イモトと認識してしまうともうどう頑張ってもイモト(ホント、ごめんなさい)。
出世したなあ、イモト…。
以下余談。本作を「オリジナルに及ばない」という視点で否定するのは的外れですが、本作を絶賛する方々のレビューコメントにイラッとくるものが多いのは何でですかね。