塩見三省。2014年3月に脳溢血で倒れ、自力歩行困難(ほぼ不可能)。
前作の立役者にして今作の中心人物が揃ってワースト・コンディション。それでも降ろさず降りず筋書き変えず。
本来作品の評価とは関係ない裏話ですが、こういう背景にはちょっと弱い。
「アウトレイジ 最終章」
(2017年/北野武監督)
花菱会の跡目を継いだ先代会長の娘婿にして元証券マンの野村(大杉漣)。
野村と全くソリの合わない生粋やくざの若頭・西野(西田敏行)と筆頭若頭補佐・中田(塩見三省)。
野村は次期会長の椅子をエサに中田を焚きつけ、韓国フィクサー・張とのトラブルに乗じて西野暗殺を謀りますが…。
本来の主人公が一歩引いて、組の跡目争いに踊らされる人々を描くというのは昨日御紹介した「仁義なき戦い完結篇」と一緒。
「仁義なき~」は画面に滾る温度感が半端なくボコボコと沸騰している感じですが、「アウトレイジ」は寂寥感を湛えて低温ヤケドしそうです。
西田敏行はたまに素の(所謂西田敏行的な)演技に戻る瞬間があって、「あ、今一瞬“変身魔法”が解けた」(極道を維持するのは結構体力と精神力を要するのではないでしょうか)。
塩見三省に至っては、全シーン座りっぱなし、左手使えず、グラサン取らず(グラサン取ると眼力無いのがバレちゃうんだろうなぁ…)。
そんな状態でも(いやそんな状態だからこそ)一際感じる存在感。
全体の印象は「ソナチネ」のセルフリメイクですが、残念ながら縮小再生産の感は否めず。
たけしは改めてピリオドを打ちたかったのかもしれません。
「李さん、あんたがそんなことしなくたっていいよ。けじめは自分でつけるから。会長に、よろしく」