腹を割るとは?
よく「腹を割って話す」なんてことを申します。
包み隠さず自分を晒す、というような意味あいですが、営業の場合、仲間として認識されるための通過儀礼という言い方もできるようです。
地方に行くとことのほかこの「腹を割る」ということが重要になってまいります。
特に四国・九州。更に言えば高知・熊本。
このへんの人は義に厚く血も熱い。こちらより先にがばと割腹して『これが俺のはらわたじゃ!』と叫ぶような人がたくさんいます。
ご返杯地獄
コンビニ時代、高知にあるグループ関連企業に商談に行こうとした時のお話。
商談自体は小一時間もあれば終わるので、飛行機使えば十分に日帰りが可能だったのですが・・・。
『日帰り? 伊藤さん、それって四国に失礼や思いません?』
の一言でお泊まり決定。15時に事務所着いて16時前に商談終了。
『部長、五時前ですが、伊藤さん来たんで飲み行きます』
『はい、いってらっしゃい』
という耳を疑う会話がなされて16時10分には居酒屋フルスロットル。18時にはスナックでご返杯(※注1)の嵐。20時には担がれてホテル到着。意識なし。
呑める奴はとことん、呑めない奴はそれなりに、自分の限界を示して潰れる、それが高知流「腹の割りかた」なのでした。
おかげさまで、その後高知とは長いおつきあいになりました。泥酔してスナックのトイレを長時間独占した為に“ウォシュレット伊藤”というリングネームがつくというオマケもつきましたが…。
※注1:ご返杯・・・高知独自の飲酒儀礼。まず、スナックでおねーちゃんが、ぐびらぐびらと自分のグラス(ビールor水割り)を一気に空け、空になったグラスをこちらに突き出し「ご返杯!」と叫ぶ。突き出された人はそのグラスに注がれた酒を一気飲みしておねーちゃんに返す、というシステム。自分がグラスを空にしないとおねーちゃんは酒が呑めない。先におねーちゃんが一気飲みしてるのに自分がしないとなると「ヘタレ」の烙印を押されてしまうという恐ろしい風習。これで、おねーちゃん5人くらいに囲まれて順番にご返杯を始められるとどうなるか。彼我兵力差5対1。分が悪いなんてもんじゃございません。
おもてなしという試練
ついでですから呑める(喰える)奴の事例も挙げておきましょう。
わたくしの同僚のI氏が高知の食品(珍味)メーカーに新規契約の商談に行った時の事。
そのメーカーさん、味は評判でしたが小所帯。お得意さんだけで手一杯でよそに回す余裕はない、という状態でした。商談は不成立。ところが、帰り際、
「まあ折角こんな遠くまで来てくれたんやし、ちょっと四国の料理でも食べてかれませんか?」というお誘いが。
どうせ東京に戻っても待っているのは上司の厭味。快く誘いを受けましたが、用意されていたのは視界を埋めつくす皿・皿・皿。酒・酒・酒。普通なら怯む所ですが、スーパー/コンビニ食品担当の沽券に賭けてもここで引く訳にはまいりません。I氏は並んだ料理を片っ端から一片余さず胃に収め、出された酒を一滴残らず飲み尽くしました。
「ごちそうさまでした。さすがに高知は食い物が美味いですねえ」
「・・・今までいろんな人に料理を振る舞いましたが、残さず完食したのはあなたが初めてです。うちの商品でよければ卸させて頂きます。場所を変えて商談を続けましょう」
営業テクニックなんて言葉が如何に薄っぺらいものか痛感した事例でございます。
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