本日7月10日は「ウルトラマンの日」。
1966年(昭和41年)のこの日、TBSテレビで「ウルトラマン」の放映が開始されました。
と言っても放送されたのは「ウルトラ作戦第一号」ではなく、「ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生」。
実はこの日の本来の放送予定は「ウルトラQ/最終話・あけてくれ!」
私、長い事、「前夜祭」を放送するために「あけてくれ!」が飛んだんだと思っておりましたが、逆で、「あけてくれ!」が放送差し止めになったために急遽「前夜祭」が組まれたようです。
なので今日は「ウルトラQ最終話放送中止の日」と言うのが正確な物言いかと。
「ウルトラQ/第28話(最終話)・あけてくれ!」(1966年7月10日放送予定→差し止め→1967年12月14日初放送/円谷一監督)
脚本は何と小山内美江子(ウルトラQが怪獣路線に舵を切る前は企画段階から参画していたらしい)。
人生に、現実に、家族に仕事に絶望した人間を時間と空間を超越した別の世界に連れ去ってくれる異次元列車(小田急ロマンスカーを“発射台”として利用。水先案内人はSF作家・友野役の天本英世)。
偶然にもこの異次元列車に乗り合わせ、何故か下車することが出来たおっさんとお姉さん(別々に保護。知り合いではない)。
彼らは何故か病院ではなく、一の谷博士の研究所へ。
彼らは一様に同じ言葉をうわごとのように叫び続けます。『あけてくれ!』と。
ここでのシーンは個人的にかなりツボ。
ただでさえ精神に異常をきたしているのではないかと思えるお姉さんをいかにも「さあ、狂いなさい」と言わんばかりの部屋に幽閉。
『あけてぇ!ここから出してぇ!』
おいおいおい、もちっと落ち着く場所に移してやれよ。
で、落ち着きを取り戻したおっさんは家族に引き取られて家路につくのですが、その車中、奥さんが旦那に罵詈雑言。
たまらず娘が『お父さんもお母さんも大っ嫌い! これが夫婦なの!? 親子なの!? もうお終いだわ何もかも!』
小山内さん、本領発揮なシチュエーション。
旦那はタクシーを途中下車すると会社へ。しかし、時刻は既に退社時間。
『これでも飲んで帰りたまえ!』と上司から差し出されたアンプルを夕陽に照らされながらきーこきーこ。
あーそうそう、この頃の栄養剤って、こうやってガラスの先端部分をこりこりと切って飲んでいたんですよね。
家に帰りたくない。会社も嫌だ。何故降りてしまったんだろう、あの列車から。
『連れてってくれ…俺も連れてってくれ…どこへでも連れてってくれ~!』
製作話数は第4話だったこの作品の放送が(後送りにされた挙句)見送られたのは、怪獣が出てこないことと、異世界に逃避する心情が子供には伝わりにくいのではないかという憂慮に加えて、家族と会社の描写(とりわけ、おっさん役の柳谷 寛の演技)が妙にリアルで日曜の夜の放送に適さない(観ている人が鬱になる)と判断されたからではないでしょうか。
最終的には1年5ヶ月後の再放送時に何故か「第24話」として放送され、ハードSFの傑作としてその名を知られるようになるわけですが、これ、今の目線で見ると、子供にこそJUST FITな題材な気がします。
親はうるさい、勉強はできない、先生も嫌いだ、友達もいない、あるのはイジメ。
今の子は乗りたがると思いますよ、異次元列車。
★ご参考