『まだ引退したいかい?』
(You still prefer retirement, Archer?)
『そんな事、一度も思った事ないな』
(I never preferred retirement.)
「ハングマン」
(2017年/ジョニー・マーティン監督)
現代版必殺仕事人の話ではありません。
毎時23時00分に犠牲者を絞首する猟奇殺人者と犯人に指名された刑事2名の(よく言えば)頭脳戦。
刑事のひとりはカール・アーバン。リメイク版「ジャッジ・ドレッド」では律儀にヘルメット被りっぱなしでしたが、今回は素顔(当たり前だ!)。
もうひとりはアル・パチーノ。既に現役を退いていますが、旧知の相棒のリクエストで現場復帰。
お話自体ははっきり言ってグダグダです(穴だらけ…と言うか穴しかない)。
一応“復讐”の体を取っている犯人の動機も今ひとつふたつですし、全貌が明らかになっても「…そうですか」な感じで得心からはほど遠く。
現場に意図的に残された次の犯行のヒントも発見が偶発的(運と偶然とひらめき任せ)で「駆け引き」「謎解き」の要素が10倍カルピス。
犯人の異常性とその狂気に囚われていく刑事という図式が際立っていた「セブン」や「羊たちの沈黙」と比べるとその差は歴然。
…ではあるのですが、ここに「アル・パチーノ」というピースが嵌るとそれだけで≪映画≫になってしまうからあら不思議。
本作の良い所は不必要な人間的軋轢が全くないこと。
取材のため捜査に同道する事になったジャーナリスト(ブリタニー・スノウ)。
大抵は、いらん正義を振りかざして捜査の足を引っ張る嫌われ者ポジションですが、彼女には彼女なりの報道する理由と矜持があります。
何より結構「使える」のが好印象。
そして、事件の責任者である警部(サラ・シャヒ)。
これも普通なら権力者側の嫌われポジですが、部下を庇い報道を牽制しパチーノに釘を刺す極めて中立な立ち位置。
「事故で両足の機能を失って車椅子で勤務」という鬼警部な役作りが良い感じ。
ブリタニー・スノウはリメイク版「プロムナイト」、最近では「デッドorキル」とかに主演して香ばしいキャリアを重ねています。
サラ・シャヒは「バレット」で(元祖ジャッジ・ドレッド)スタローンの娘役を演っておりました。
もうひとつ、本作の見どころ、いや聴きどころがジョーディ版「朝日のあたる家」。
歌っているのは、後にAC/DCのリードボーカルとなるブライアン・ジョンソン(クレジットは「GEORDIE featuring BRIAN JOHNSON」)。
劇中、パチーノのカーステからちょろっと、そしてエンドクレジットで豪儀にフルコーラス。
トラッドなフォーク・バラッドでウディ・ガスリー、ジョーン・バエズ、ボブ・ディラン、アニマルズなどが歌い継いでいますが、ジョーディ版の力強い(ロックな)ボーカルもなかなか。
特に全編に流れる野太いバックコーラスが良い感じ。
※個人的にはサンタ・エスメラルダのフラメンコバージョンも大好きです。
★何とタイムリーな事に本日のTV放送【13:35~テレビ東京/午後のロードショー】はカール・アーバンが素顔を封印したハードボイルドSF。
★で、サラ・シャヒが元祖ジャッジ・ドレッド、スタローンの娘に扮したのが、
★ジョーディ版「朝日のあたる家」を聴きたい方はこちら。