『それは誰の真似だ? それがおめえの音か?
雪。音。おめえの音で奪え』
『分かってる。じっちゃ。いっとまが音の家路さついてた』
澤村雪が個人戦で伝えたいと思った音とは。
「ましろのおと/第十話・山颪|第十一話・記憶|第十二話・ましろのおと」(2021年6月BS-TBS放送/赤城博昭監督)
松吾郎杯初日。団体戦3位入賞という悔しくも快挙な結果を残した梅園学園。
明けて二日目は個人戦。目玉は団体戦には出場しなかった全国大会2位の田沼総一、そして大会出場経験無し知名度ゼロながら団体戦でその存在を強烈にアピールした澤村雪。
雪の未知なる音色に誘われて、会場には意外な面々が。
神木流絃。本名:田沼源蔵。神木流の師範にして田沼総一・舞の父親。青森の大会ですら滅多に顔を見せる事のない大御所中の大御所。それが何故…。
目的は息子・雪の腕前確認…って息子?
ここで総一と舞は養子であり、流絃と血の繋がった実子は雪ひとりという文春砲が炸裂。
更に、流絃は自身の跡取りとして雪を欲している事も告白。
但し、欲しいのは雪が継いでいる松吾郎の血と音であって息子としての雪ではない。
雪の、いや松吾郎の音の所有権を主張して一歩も引かない実母・梅子。
全ての事情を知る者として間に入っている若菜ちゃんの苦悩いかばかりか。
『皆…しんどいべな…』
そして会場受付には、元祖「来ちゃった」神木清流(本名:緒方洸輔)が再度「来ちゃった」。
会場後部には1話以来ご無沙汰のタケトの姿まで。
午前の部を終えて午後。雪の出番。
出だしは松吾郎ゆかりの音。梅子にとっては望んだ音。しかし、雪を知る者にとっては違和感の塊。これは雪の音じゃない。音の家路を辿った雪は自分の求める音にシフト。
『音が…』『変わった!』
『つまらねぇ音はいらねぇ。今欲しいのは三弦の共鳴! 俺が今弾きたいのは…聴いてもらいたいのは…心臓の音』
雪の鼓動が聴衆の記憶を、慕情を呼び覚ましていく。
観衆を興奮の渦に巻き込んで演奏終了。満足の行く音だった(梅子は激怒り)。しかし、大会大トリを務めた田沼総一の音は予想の範囲を超えていた。
『弘前(の大会)から4ヶ月。たった4ヶ月で(更に)成長した。なしてこった事が可能なんだ!?』(若菜ちゃん)
『あかん、脳が震える』(大阪府・梶貴臣。ペテルギウスではない)
『会場全体が揺らいどぉ。目の前ででっかい和太鼓叩かれとるみたいばい』(福岡県・荒川潮)
『この音は一体!?』
結果、雪の順位は3位。前半と後半でスタイルを変えたのがマイナスと評価されました。
おまけに授賞式では梅子に『このほんつけなしが(この間抜け野郎が)』と罵られる始末。
『どう弾けばよかった!? じっちゃの音になりてぇと思ってた。だども俺はじっちゃでねえ。俺は俺の力ば出した。だども…この虚無感は何だ!?』
打ちひしがれる雪に声をかけたのは神木清流。
『奏者にとって音は自己表現。表現するには他者が必要になる。それが聴衆だ。この世界にいる者は皆己の音を表現する場を欲している。君にその欲はあるか? それが感じられない』
『欲はある!なかったら今こった悔しい思いはしてねぇ!』
『君が欲を感じたのは終わってからだろう。総一の音を聴き、結果が出てからだろ』
雪に道を示す導師の役を買って出た? メタ惚れやないかい清流。
初めての勝負。初めての敗北。打ちひしがれて地面に伏し号泣する雪。ここが雪の本当のスタートライン。
このクールにタイトルをつけるとしたら「澤村雪、覚醒前夜」って感じでしょうか。
2期、お待ちしております。
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★本日6月21日は作曲家ラロ・シフリン(1932~)の誕生日(おめでとうございます!)。
ラロ先生と言えば「スパイ大作戦(ミッション・インポッシブル)」から「ブリット」「ダーティハリー」「燃えよドラゴン」などこちら側の作品を数多く。
個人的お気に入りは「鷲は舞い降りた」なのですが、本日は歴史の闇に葬られたこちらの作品を。