期待値は限りなくゼロ。つまり、何か良い所があれば加点法で評価うなぎ登りと言う、ある意味ポールポジションスタートな作品だったのですが…。
なんでしょう、この中途半端な不完全燃焼感は。
「チャーリーズ・エンジェル」
(2019年/エリザベス・バンクス監督)
まずCOLOMBIAのロゴマークをいぢらなかった時点でやや拍子抜け。
背景の雲にカメラが突っ込んでいって爆弾魔が乗った飛行機に繋がる1作目OPのような映画的興奮を期待していたのに。
諸設定が色々変わっているのはまるっとOK。
- チャーリー探偵事務所が欧州にまで進出し、ほとんどMI-6みたいな組織になっているのもOK。
- ボスレーが一種の役職と化して(007のMみたいな感じ)、全国にボスレー001のようなナンバードが沢山いる(一人が倒れてもすぐに後任ボスレーが派遣される)ってのもOK。
- エンジェルが固定チーム制ではなく、その都度必要に応じてアッセンブルされるタスクフォース制なのも(信頼醸成の過程も描けるので)OK。
お膳立ては問題ないのに、何故出来ががっかりなのか…
演出に勢いがない、これに尽きます。
あと、時節柄、男目線のお色気封印は仕方ないとして言葉の端々にまで女性の地位向上(と言うか女性は種として男性より優れている)という主張が入ると何かウザいです。
極めつけが現在のチャーリーの正体は実は…というサプライズ。ファンサービスなのかもしれませんが、そこいぢっちゃ駄目だろ感の方が強くてわたし的には裏目。
お笑いの要素も封印。代わりに力点が置かれたであろうアクションも今ひとつふたつみっつ。
最終的に「今度のチャリエン、超クールじゃん!」になれば途中経過も主義主張もどーでもいいのですが、残念ながら。
役者、特に本作がデビュー作になるエラ・バリンスカ👇は資質バッチリの逸材なのに全く活かし切れておりません。
マックGは凡庸な演出家ですが、兎に角勢いがありました。そして、観ていて「楽しい」。
本作はポリコレ棒をヌンチャクのように振り回す事に専念してしまって、肝心のアクション演出がどーにもこーにも。
キャメロン・ディアスのオールド・ファッション・ダンスって笑いどころでもありましたが、何より華があって楽しかったでしょ。
こっちのダンスシーン👇はキレはないわ、絵にならないわで全く印象に残りません。
会話ももっさり、ミッションももっさり(要するにノリが悪い)。
脚本自体は悪くない(良くもないですが、ケチつける程酷くもない)と思うので、ポリコレはスパイス程度に留め、アクション重視の演出にしてもらえれば、ひたすらクールなチャリ・エンが生まれたのではないかと思います。
因みに脚本書いたのは監督のエリザベス・バンクス。製作にも名を連ね、ボスレー役(任務中に命を落とした“使えない”男ボスレーの後任)としても登場。
製作・脚本・監督・出演と八面六臂の大活躍を見せましたが、興行成績は大惨敗(近年稀に見る大コケ)でした。
考察のし甲斐のある(教訓の多い)作品であったと思います。
おまけ
ボスレー001号(パトリック・スチュワート)の勇退パーティにネタとして使われた「懐かし写真」。
これもファンサービスなんだとは思うのですが、何か歴史改竄されているみたいで観ていて複雑でした。まあ、話を1本に繋げたいとか、歴代ボスレーの写真が版権的に使えないとか色々あったのかもしれませんが。
にしてもね…何気に流してしまいがちですが、この写真って物凄く重要。
この写真を見る限り、彼は1作目のビル・マーレイ、2作目のバーニー・マックと同一人物という事になるわけですが、そういうシリーズ功労者的立ち位置の人にあの役回りはないでしょう。男は全員卑怯で裏切り者なんかい? 性別の前にもっとキャラに愛情持とうよ。
やはり「チャリ・エン」は明るく・楽しく・激しく、な全日本プロレス仕様がいいなぁ(そこにはあのテーマ曲が不可欠なのに…)。
★明るく楽しいチャリ・エンはこちら。
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★本日7月8日は谷原章介(1972~)の誕生日(おめでとうございます!)
この人、すっかり「朝の顔」になっちゃって、良識の体現者と化してしまいましたが、こんな時代もあったんだぜ、な1本を。
★本日のTV放送【13:40~テレビ東京/午後のロードショー】
★★★★★★★★★ 追悼:リチャード・ドナー ★★★★★★★★★
リチャード・ドナー監督がお亡くなりになりました。
7月5日。91歳。死因非公開。
ご冥福をお祈りいたします。