人口600人の田舎町で狂った烏(ワタリガラス)が乱れ飛び。
「烏 カラス」
(2007年/シェルドン・ウィルソン監督)
《鳥》から毛を1本抜いて《烏》。あからさまなヒッチコックのパクリスペクトなSyFy製作のテレビ映画。
当然低予算。「鳥」との類似性から『ヒッチコックの偉大さを再認識した』とか言い垂れている人が多いですが比べてどうする。
なんとかジョーズとかなんとかシャーク観る度に『スピルバーグの偉大さを再認識した』とは言わんでしょう。
そもそも私はカーペンターの「ヒッチコックは冷たい監督だ。彼の映画には驚きがない」という言葉にヘドバンレベルで頷いてしまう輩なので、比べると言う発想がありません。
B級にはB級の楽しみ方がありますし、その枠の中でも良く出来た作品だと思います。
チープなCGでお茶を濁すか、本物の(可愛い)烏と人間のリアクションをカットバックして誤魔化す「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」系の作品を期待(?)していたのですが、普通にアニマルパニックものとして観られる出来になっておりました。
主役の保安官は「インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」シリーズでインディを演じたショーン・パトリック・フラナリー。
町医者(ドク)役に本家「鳥」に出ていたロッド・テイラーを配して気配り万全。
スクールバスの運転者クライドには「ハウンター」で「家」リスペクトな《蒼白い男(THE PALE MAN)》を演っていたスティーブン・マクハティ。
監督は「蛾人間モスマン」撮った人。
本作の特徴は、襲撃されるスクールバスに「メノナイト」の少女が乗っているということ。
まぁ狂った烏の舞い踊りの原因の一端がメノナイト(が飼っていた牛)にあるというだけで、この少女がメノナイトである必然性は特にないのですが。
★メノナイト…メノ・シモンズの名前に因んで名付けられたキリスト教アナバプテストの教派。パッと見は所謂「アーミッシュ」でバス運転手のクライドもそう呼んでいたくらいですが、近しいけれど別物。
1693年、メノナイト教会を改革する活動を始めたジェイコブ・アマンとその追随者がメノナイト教会と決別し、アーミッシュと呼ばれるようになった…んだそうです(いつもありがとう、Wikipedia)。
もうひとつ、見どころを挙げるなら、烏たちの知性。
集団で波状攻撃を仕掛け、一旦引いて油断した所をまた襲う。
相手が籠城したら手ごろな石を掴んで加速をつけて連続投石。窓ガラスを叩き割って中に侵入という初級革命講座・飛龍伝な戦術を。
残念だったのは烏にたかられた人間がよく分からないうちに死んでいる事。
別にゴアなシーンとかはなくてもいいので、もちっと死因に説得力があると良かったですねえ。
おまけ
★DVDジャケットあれこれ★
左から米国版、日本版、フランス版。フランス版はちょっとグロい…。
★シェルドン・ウィルソン監督作はこちら。
★スティーブン・マクハティ出演作はこちら。
★そしてジョン・カーペンターの箴言に触れたい方はこちら。