骨子だけ見ればありきたりなゾンビものです。
ゾンビ・パンデミックが起こって、生き残った人間がコミュニティを作りますが、内に外に揉め事が…ってアレです。
これまでのものと違うのは「人種問題」が絡んでいるという事でしょうか。
ヒントは原題の中に。
「ブラッド・ブレイド」(2019年/ジェフ・バーナビー監督)
原題は「BLOOD QUANTUM」。ブラッド・クアンタム。耳慣れない言葉です。日本語にすると「血液定量制」。
更に分かりにくくなりました(笑)。
血液定量制と言うのは、その人の血液に占めるインディアンの血の量から、その人が「どれだけ白人に近いか」「どれだけインディアンに近いか」(100%インディアンは「フル・ブラッド」)を見る指標…だそうです。
勝手に殴り込みをかけて先住民虐殺蹂躙した挙句、血の濃さでランクづけとはエグい事をするもんです。
お話の舞台はミグクマ族の居留地区。
川で鮭を釣り上げた漁師が手際よくはらわた抜くと、抜かれた鮭がビタンビタン。
この「わた抜き」鮭の跳ね踊りは中々に良いビジュアルで掴みとしては満点です。
拾い食いか何かして死にかけている犬を射殺した保安官。パトのトランクに死体放り込んで運んでいたらトランクの中でドスンバコン。
開ければ勿論ケルベロスがこんにちは。
留置場でお泊りしていた白人がゲロゲロゲロッピ。そのうちスプリンクラーのように血ぃ噴き出して死んだと思ったら狂暴噛みつき魔人となって復活。
この鮭→犬→人という三段逆スライド方式な被害拡大模様がいい感じ。
噛まれればゾンビというお約束はいつも通り。
ただし罹患者は全員白人。ミグクマ族の血を色濃く持っているインディアンは噛まれても発症せず。
インディアンは免疫(抗体)保持者なのか?
ここまでの展開はテンポも良くて上々の滑り出し。
でも、自主隔離したインディアン居留区とそこに白人を受け入れるや否やの(ネイティブ、白人、ゾンビの三つ巴)対立、みたいな話になると途端に減速。
「ゾンビは出オチ」という不文律は今回も健在です。
ゴアシーンはかなり力入っていますし、血しぶきの量も半端ないので、後半もう少し理に落ちる展開になっていればかなり評価が上向いたんじゃないかと思います。
キャラ立ち一番は最年長爺ちゃん。何故か日本刀を振り回してゾンビどもばったばったと斬り伏せておりました(ちょっと「フアン・オブ・ザ・デッド」リスペクト入っています)。
因みに本日1月31日は「アメリカ合衆国政府が全てのインディアンにインディアン居留地への移住を命じた日」。
1876年の出来事です。
インディアン居留地を舞台にした作品と言えば、
★本日のTV放送❶【13:00~BSプレミアム/プレミアムシネマ】
★本日のTV放送❷【26:09~日本テレビ/映画天国】