『みんな無理にはしゃいで…俺たちもあんなになれるかな』
『…残る桜も散る桜だ』
500kg爆弾と共に敵に突っ込むカミカゼ特攻隊。しかし、ゼロ戦より更に速く、爆発力の高い機体がありました。
『司令、特攻出撃寸前に私を呼び戻された理由は何ですか?』
『いよいよ貴様の腕を借りることになった。貴様に話した例のロケット攻撃機だ。全ての実験を終わって量産に入った。呼び名は桜花。桜の花だ』
『しかし、これは搭乗員を乗せる有人機では?』
『計画が変わったんだ』
『作戦の邪道です』
『分かっている』
V1ロケット砲になりそこねた救世主。固体燃料ロケットエンジンで最大983km/hで飛行。無線は勿論、脱出装置もない。1200kg徹甲爆弾を抱えた木(翼に至ってはベニヤ)の棺桶。
桜花、発進。
シリーズ8月15日。今年のチョイスは、
「花の特攻隊 あゝ戦友よ」(1970年/森永健次郎監督)
監督は青春映画専門(吉永小百合の「潮騒」とか「若草物語」とか。最後の監督作は「花の高2トリオ 初恋時代」)なので、骨太な戦争映画を期待すると景気よく肩透かしを喰らいます。
本作の見どころは戦争映画としては極めてレアなアイテム「桜花」。
劇中では、無人の無線誘導機として開発着手したものの、誘導装置の精度を上げ、かつ量産する事が事実上不可能なため、有人に切り替えた、という設定になっていますが、これはちょっと乱暴。
元々、母機(爆撃機)から投下する遠隔操作・無線誘導・ロケット推進の対艦ミサイル(対艦誘導弾)の開発を行っていたのは日本陸軍。
その設計の概要を三菱名古屋発動機製作所から聞き出した日本海軍が、現況の誘導装置の精度では実用化には程遠いと判断し、有人を前提に開発したのが桜花。
つまり、桜花は最初から有人特攻兵器でした。
桜花は一式陸上攻撃機(一式陸攻二四丁型)に搭載されて(と言うか腹に吊り下げられて)目標近くまで運ばれるのですが、一式に抱えられた写真をみると完全におもちゃ。
爆弾+ロケットエンジン、That’s allって感じです(そして米国における桜花のコードネームはBAKA←自殺機の揶揄)。
主演は杉良太郎。ヒロインに和泉雅子。シニカルでちょいデブな特攻に藤竜也、まだ演技がこなれていない沖雅也(「大追跡」コンビだ!)、桜花開発を推進した大村司令(多分、航空偵察員大田正一海軍特務少尉)に丹波哲郎。
薄幸な遊女役で梶芽衣子も(一瞬の登場ですが、和泉雅子より存在感あり)。
途中何度か挿入される杉良太郎の過剰なセンチメンタリズム満開の歌(作詞・川内康範、作曲・猪俣公章)が骨太感をゴリゴリと削いでいきます。
実は音を絞って現代風の音楽に差し替えたら役者が全員控え目な演技をしている事と相まって結構ゴリっとした雰囲気になるような気も…。
特攻時に操縦席に貼り付ける写真が恋人ではなく母である辺り、原作者・川内康範の面目躍如だなぁと思いました。
★アニメで桜花が登場するものと言えば…
★もうひとつの特攻兵器「回天」に関してはこちらを。
何度か言っている事ですが、どなたか「伏龍」をテーマにした映画、撮ってもらえないでしょうか。
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