『まさか生きていたとはねえ。この50年何してた? 随分老けたなあ。ヘヴンを喰えば歳を取らずに済んだのに』
幼馴染の南光太郎と秋月信彦。光太郎役は西島秀俊(51歳)、信彦役は中村倫也(35歳)。
この見た目のギャップをどう埋めるのか、気になっておりましたが、なるほどそういう事ですか。
志半ばにして生き別れとなった親友二人。世捨て人となった光太郎と鎖に繋がれて幽閉されていた信彦。50年ぶりの邂逅。
『光太郎、創世王を殺すぞ。50年前の決着をつける』
50年前。1972年。学生運動真っ只中。日本は人間と怪人がいがみ合い、差別と弾圧が渦巻いていました。
「仮面ライダーBLACK SUN」(2022年/白石和彌監督)
小分けにてレビューしようかと思っていたのですが、1話完結方式ではない上に、タメが少なく引きが弱い(特に前半)ので、良い切れ目が見つからず結局10話438分イッキ見してしまいました。
表面上は怪人と人間が共存している、しかし、一皮むけば人間が怪人を一方的に差別している社会。
分かりやすい人種差別のメタファーで、黒人は奴隷ではないが白人と同じバスに乗る事は許されなかったアメリカをイメージして頂ければ良いですが、より近い雰囲気を持っているのは「亜人」でしょう。
口先だけで平和だ平等だ唱えても何も解決しない。行きつく先は武力闘争。
既に怪人である光太郎と信彦は力による状況打開を主張する過激集団「ゴルゴム」に身を投じますが、戦いの在り方を巡っての内部闘争が。
権力と結託して人間に従属するか、あくまで武力闘争を進めるか。山岳ベースで仲間割れとか完全に連合赤軍。
ここで彼らは何と戦い何に敗れたのか。1972年と2022年を行きつ戻りつしながら、怪人とは何か、創世王とは何者か、その未来には何が待っているのか、が語られていきます。
状況設定は「亜人」ですが、光太郎と信彦の関係性は、大戦末期に地下に埋もれた鉄の鎧をまとった不死の肉体と、戦後を世捨て人として生きながらえた戦友が50年ぶりの邂逅(目的は殺し合い)を果たす「ミカドロイド」そのまま(「ミカドロイド」の特技監督は本作でコンセプトビジュアルを担当した樋口真嗣)。
役者陣では、ゴルゴム(党)の幹部ビルゲニアを演じた三浦貴大が儲け役。
ご存じ、友和・百恵ご子息ですが、結構エグい事やっている悪役ながら、最後に美味しい所を持っていきました。
ただ、怪人に変身した時、他の怪人は全員フルフェイスのマスクか着ぐるみなのに、彼だけ顔出しなんですよ。
これはオリジナルの剣聖ビルゲニアがそういうビジュアルだったから踏襲しているだけだと思うのですが、特撮で顔出しはパイロット版(プレゼン用試し撮り)みたい安さを感じてしまって。
👇左から「ミラーマン」「スペクトルマン」「マグマ大使」のパイロット版。
加えて本作の三浦さん、顔のパーツ(というか配列?)がちょっとグッチ裕三似なので、顔出しマスクだと幹部としての威厳があいや何でもありません。
怪人ではオリジナル同様、クジラ怪人が良い感じでした。
『結局、お前らは何もできずにゴルゴムに負けたんだ。それなのにまた戦いに行った。そして負けた。ずーっと負けてる。馬鹿なんじゃねえかと思うよ。…けど、その続きが見てみたくなった』
西島さん、最初のうちは「気合」で変身していましたが、デザインの違う本気モードになる時はがっつり変身ポーズを(最初に「変身!」と言った時は「おお!」となりました)。
今回タイトル画像ボツ案。
そして、中村倫也も変身ポーズでシン・シャドームーンに。
さらにもうひとりも(こちらは本編でご確認ください)。
如何にもR18な描写が多々ありましたが、そっちよりもタメと引きを効かせた燃える作りにしてほしかったなぁとは思います(西島さんの「ギャラ全部返すから子供版作って」という嘆願は多分正しい)。
最終話でオリジナルブラックのOP完コピ(歌:倉田てつを)が一番盛り上がりました。
おまけ
野党の短髪女性議員の威勢だけは良いツッコミを半笑いで切り返した総理(ルー大柴←家系代々怪人の黒幕)と幹事長(寺田農)。
『民意を得られると思うか? 思っちゃいねえよ。この世界のほとんどは民意無しで作られてきた。そんな事も分からねぇから、あいつら一生野党なんだ』
寺田さんの「麻生太郎感」が半端ありませんでした。
★追記
配信開始直後に細かい突っ込み入れるのもどうかと思って控えておりましたが、大分時間もたったので、気になった所をひとつふたつ。
其の壱:その態勢で50年は無理がないか秋月信彦(シャドームーン)。
50年間拘束され囚われの身となっていた信彦(中村倫也)ですが、50年間立ちっぱって…。
体力的にはまあ「怪人だから」で無理矢理納得するとして、排泄はどうしていたんだ排泄は?
上半身は裸ですが、下は何か履いてるよな? 💩垂れ流しだったのか💩。50年間も。
普通に個室幽閉でいいじゃん。
其の弐:キングストーンは出し入れ自在?
過去シーン(72年)で光太郎(BLACK SUN)と信彦が、体内からキングストーンを取り出して活動家仲間の女性に預けるシーンがあるのですが、その石、君らの両親が手術で体内に埋め込んだものだろ? んな腹巻から取り出すみたいに簡単に出し入れできるのか。
で、このシーン以降、君らキングストーン無しになるわけだけど、キングストーン無しで変身とか出来るものなのか。出来るならキングストーンに何の意味があったんだ?
こういう所って気になり始めると喉に小骨が引っかかったみたいになっちゃって画面に集中できません。
お話のスケールがデカい分、細かい設定にはもちっと気を遣って欲しかったような…。
★オリジナル第1-2話と最終話。
★ご参考~本作の引用元と思われる作品の数々。
怪人のパワー増強、損壊部復旧、アンチエイジングの要となるヘヴンの原料は人肉。
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★本日10月31日は、つげ義春先生の誕生日(おめでとうございます!)。
なかなか映像化の難しい作家ではございますが、本日はこちらの2本立てをどうぞ。