『多分、そうだと思います。ただ眠るだけ。何も怖くないですよ。眠るだけです』
Maybe it's just like you say. Just going to sleep.
I mean there's nothing scary, it's just sleeping.
『君は変わったタイプの医者だな』
You are a strange type of doctor.
『医者じゃないって言ったでしょ』
I told you I'm not a doctor.
『医者だよ。ドクター・スリープだ』
I think you are. Doctor Sleep.
オーバールックホテルの惨劇から40年。生き延びた少年ダニー(ダン)は超能力(シャイニング)を抑えるため酒に溺れ、結果、父譲りのアル中と暴力衝動を抱えて放浪する羽目に。
立ち寄ったニューハンプシャーの小さな街でアルコール中毒者支援団体に加わり、社会復帰の第一歩としてホスピスの従業員となったダニーは亡くなる直前の患者を慰めるためにシャイニングを使用。
恐れることなく旅立ちの瞬間を迎えさせてくれるダンを患者たちはこう呼びました。
「ドクター・スリープ」と。
「ドクター・スリープ」(2019年/マイク・フラナガン監督)
まさかの「シャイニング」続編ですが、困った事がひとつ。
原作者スティーブン・キングはキューブリック版「シャイニング」が大嫌い。
映画版をこれ以上貶めないことを条件にTV版を製作させてもらったのに、キューブリックが死ぬと再び批判攻勢(どんだけ嫌いなんだよ)。
当然、原作版「ドクター・スリープ」は原作版「シャイニング」の続編になります。
しかし、多くの人が「シャイニングの続編」と聞いて連想(期待)するのはキューブリック版「シャイニング」の続編。
原作者を立てつつ、観客の期待にも応える。ある意味、「2001年」の続編「2010年」を引き受けたピーター・ハイアムズより高いハードルですが、フラナガン監督は見事なバランス感覚で危ない橋を渡り切りました。
お話は惨劇の直後から。「二度と雪は見たくない」という理由でフロリダで暮らしているダンと母ウェンディ。
勿論、別の俳優さんですが、ディック・ハロラン(シャイニングを持つオーバールックホテルの黒人シェフ。見どころなく殺されてしまいましたが、霊となってダニーを導くオビ=ワン・ケノービみたいな存在になっている)含め、似たような雰囲気の人を集めています。
大人になったダン(ユアン・マクレガー)は、酒に溺れ、酒場で暴れ、ゆきずりのシングル・マザーを抱いて財布から金を盗む最低野郎になっていました。
自分から逃げ続け、ようやく向き合う決心をしたダンは酒を断ち、抑えていたシャイニングを時折解放してドクター・スリープに。
ダンのシャイニングに呼応した超能力少女アブラ。彼女は人間(特に子供)のシャイニングを吸って生き続ける妖怪軍団(オカルト遊牧民?)「The True Knot」の存在を知り、その犯行現場(シャイニングを持つ野球少年を切り刻んで生気を吸う)を幻視。
こちらから見えるという事は向こうからも見えるという事。
とんでもねーシャイニング持ってる奴見つけたどー!なオカルト遊牧民リーダー、ローズ・ザ・ハットとアブラの所在確認攻防戦。
直接、協力を頼みに来たアブラを一旦は追い返すダンでしたが…。
『連中は悲鳴を喰らい、苦痛を飲み干す。連中はあの少女に気づいた』
『僕にどうしろと?』
『あの子の頼みを聞いてやれ』
ハロランの助言でアブラを守り戦う決心をしたダン。
シャイニングによるトラップを仕掛け、誘い出して殲滅を図り…って何か超能力バトルな展開になってきたぞ。これじゃ「シャイニング」の続編と言うより「炎の少女チャーリー」の続編でね?と訝るこちらの心情を察したように監督が用意したクライマックス。
最終決戦の舞台は雪に閉ざされたオーバールックホテル。
このテーマに、あのアングル。「お話は忘れちゃったかもしれないけど、このシーンやあのシーンは憶えている(知ってる)よね?」な名場面コラージュ。
カウンターにはニコルソン似なバーテンダーが。
原作版「シャイニング」でオーバールックホテルは木っ端微塵に吹き飛んでいるので、ここの展開は完全に映画版を踏襲したもの。
よく許したなあキング。ニコルソンの起用からして大反対だったはずなのに(キングはジョン・ボイトを推したようですが、キューブリックが蹴った…らしい)。
正直、ランニングタイム2時間半は長すぎだと思いますが、観終わってみればほど良い納まり具合であったと思います。
★ご参考。
★フラナガン監督と言えばこの3本。
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