デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【シンの準備運動も兼ねて】仮面ライダー THE NEXT【造形は満点!】

「シン・仮面ライダー」の興行成績が思わしくないようです。

やっぱり…ではあります。

「シンゴジ」「シンエヴァ」「シンウル」を迷いなくサボ…あいや半休取って観に行った自分の様な人間の食指を動かせなかった(動員イマイチのニュースを見るまで公開されていた事すら気づかせなかった)のは痛い。正直、広報戦略は大失敗と言えるでしょう。

一部ご家庭の視聴状況を全ご家庭に拡大投影させる視聴率の考えに照らせば、私が二の足を踏んでいる=そこそこの数の人間が二の足を踏んでいる、という事になります。

公開2週間と経たずして「冒頭約30分(クモオーグ編)」が地上波放送(配信)という、どう言い繕っても「敗北宣言」なイベントまで。

いやしかし、そんな撒き餌観るくらいならちゃんと劇場に行こう、という訳で半休取って(仕事しろスチャラカ社員!)足を運ぶ事にしたのですが、先に腹違い兄弟のようなこれを見ておかねば、という事で見当違いの予習として観たのが、

仮面ライダー THE NEXT(2007年/田崎竜太監督)

前作「THE FIRST」は仮面ライダーで冬ソナ」白倉伸一郎プロデューサー)という「そういうのいいから」な要素を詰め込んだ残念無双な出来でしたが、今回は仮面ライダーでJホラー」

いやホントそういうの以下略。

時間軸はFIRSTの2年後。本郷猛(黄川田将也)は高校の生物教師。教室は学級崩壊レベルの無法地帯ですが、本郷はそれを諫めることもできず、ただオドオド。生徒からは「ドーテードーテー」とからかわれる始末。


ヘタレな本郷猛は新機軸かもしれませんが、藤岡弘、さんが見たら黒板ぶち抜いて激怒しそう。

でも生徒を助けるために怪力披露したりはしちゃう。


一方の一文字隼人高野八誠)は、改造人間特有のリジェクション(拒絶反応。一定期間置きに血液を入れ替えないと死に至る)の苦痛と恐怖を紛らわすために夜な夜な享楽の世界へ(ドンペリ1ダースとか言っていますが豪遊資金はどこから?)。

ここに隠遁生活を送る元IT企業経営者・風見志郎加藤和樹。正体は仮面ライダーV3)、志郎の妹でアイドル歌手のChiharu、その親友で本郷の教え子・菊間琴美が加わるのですが、人物設定が超上っ面。

ヘタレな本郷、残寿命僅かなのに悲壮感ゼロの一文字、行動基準が透けて見えるくらい薄っぺらな風間、とても絶対的アイドルには見えないChiharu、がさつでやさぐれで言葉遣いが汚い菊間。

駄目押しでお話が雑。

人体を内部から改造するナノロボット散布実験(適性があればその場で改造人間となるが、大抵は拒絶反応を起こして死んでしまう。風見は適性があったので生き残った)の対象をIT企業にした理由は何だ? 

身体特性とか重視するんならスポーツクラブとかの方がいいんじゃないか。頭脳優先だとしてもカッコつけIT企業に来る若者なんか大して頭良くないぞ(←もの凄い偏見)。


Chiharuの歌を聴いた人間は呪殺される都市伝説も、発動条件が設定されていないのでランダムサンプリングで死んだり死ななかったりでテキトーの極み。

Chiharuは兄と一緒にナノロボット吸っているので、既に改造人間なのですが、人気を妬んだ同僚のいたずらで顔から配電盤に突っ込んで顔面崩壊。体内のナノロボットが暴走して怪物化。整形手術も失敗して飛び降り自殺。

ここでどこぞの失敗作処理施設みたいな所に廃棄されたChiharu本体とChiharuの怨念が実体化したChiharu精神体(思念体?)が貞子のような伽椰子のような存在となって呪いを振りまいていくのですが、本体と精神体の描き分けが下手だから分かりにくいことこの上ありません。

それ以前にこんなJホラーネタ、仮面ライダーに必要か?


本郷は菊間の危機に都合よく居合わせるし、一文字は本郷の危機に都合よく駆け付けるし、なご都合主義も白けます。

とは言え、見どころもあります。

各ライダー(1号2号V3+ショッカーライダー)のデザイン(特にカラーリング)。

かっちょいいにも程があります。

出渕裕によるキャラクターリファインデザイン原口智生による特殊メイク・コーディネイト、レインボー造形企画によるキャラクター造形、見事としか言いようがありません。

バイクアクションも見応えがありました。


ライダーと言えば爆発(やや小ぶりですが)。

パンチ1発でトラックの軌道を変える一文字。


ただ、折角かっちょいいの佃煮になったショッカーライダーが数が多い分没個性的で「使える戦闘員」程度の見せ場しかなかったのは残念無念。

あと、HONDAのロゴはやりすぎだと思います。


白眉は何と言っても炎を吸い込み纏うV3の美しさ。唸りました。


本郷と一文字のやおいチックな会話も「その層」の方には刺さるかも?

『逢えるよな、また』

『だからやめろって言ったろ、そういうの。気持ち悪いんだよ』

『無理すんなよ。お前、友達っつったら俺だけだろ?』

『…そう言うお前もな』


という訳で付け焼刃の予習終了。待ってろ「シン・仮面ライダー」!

 

★「仮面ライダーで冬ソナ」な前作はこちら。

 

 

 

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★本日4月10日は作曲家・黛敏郎(1929~1997)の命日。

スポーツ行進曲(通称:日本テレビスポーツのテーマ。勿論、私にとっては全日本プロレス中継オープニングテーマ」)の作曲家。

戦後クラシック音楽、現代音楽を牽引された方ですが、映画音楽も多数。

今回は若き日に携わったこの1本を。