デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【シュマイザーと】SISU/シス 不死身の男 【MP40に関する浅~い考察】

『司令官の言葉をそのまま伝えます。“あの野郎だけは怒らせるな”』

ただの老いぼれだと思ったら、伝説の死神だった。

死神の得物は大鎌が相場ですが、フィンランドの死神の得物はツルハシでした。

たったひとりで数百のロシア兵を屠った男が、今度はナチスの首を狩る。

「SISU/シス 不死身の男」(2022年/ヤルマリ・ヘランダー監督)

第二次世界大戦中、フィンランドは枢軸国側でソ連と戦っておりましたが、1944年9月19日にモスクワ休戦協定を締結。

この休戦協定には、フィンランド領内からドイツ軍を追放するか武装解除して抑留することを要求した条項がありました。

と言う訳でドイツ追い出し大作戦開始。追われたドイツ軍は撤退時の定石焦土作戦(退路にあるすべての資源を奪って焼いて後に何も残さない)を展開。


そのフィンランドからノルフェー北部に通じる途上にあるのがラップランド

ここで独りの老人が金を掘りつつ野営をしておりました(ラップランドには今でも「金堀ツアー」なんてものがあります)

そして見つけた大金塊。粒じゃない。石でもない。岩。


砕いて袋に詰めて…しかし、前からは撤退中のナチが…。

金に気づいたナチは当然これを奪おうとしますが、それは死神に喧嘩を売ったと同義。

瞬殺!


ここからナチvs爺さんの殲滅戦が始まるのですが、爺さん強すぎしぶとすぎ。建て付けは「ランボー」ですが、やっている事はインディ・ジョーンズ

残虐は笑いと紙一重。いやいやそれはないだろうの波状攻撃。

軽機関銃の一斉射撃をパンニング皿(川で砂金採る時に使う大盃みたいな奴)で凌ぎ…っておい! 相手はMP40だぞ。9x19mmパラベラム弾だぞ。何で出来てるんだよそのお皿。


因みにMP40は広く「シュマイザー(←英語読み。独語読みだとシュマイサー)」と呼ばれていますが、これは間違い(と言うか事実誤認に基づく名づけ)のようです。

シュマイザーはドイツの軽機関銃の父と呼ばれる銃器設計者ヒューゴ・シュマイザーを指していますが、シュマイザーはMP40の開発に関わっておりません。

Wikiには「連合軍側がMP18の開発に関わったシュマイザーが、MP40でも同じように関わっていたものと勘違いしたためである」、

MEDIAGUN DATABASEには「MP40のマガジンにはシュマイザーの名が刻印されていたため、どうも鹵獲した連合軍がそれを目にしたことから呼称として定着してしまったのが原因らしい」

と記載されています(マガジンはシュマイザーのパテントに基づいて作られていたようなのであながち勘違いとも言えません)。

他にも諸説あるようですが、まあ「誤解から生まれたあだ名」という事のようです(正しくは「エルマベルケMP40(マシーネンピストーレ・フィーアツィヒ)」)。


さて、爺との初対面挨拶で7名を失ったナチの指揮官が部下に本部連絡を入れさせると…

『7名で済んだのは幸運だと言われました。認識票の持ち主はアアタミ・コルピ。フィンランド最強の特殊部隊員だそうです。司令官の言葉をそのまま伝えます。“あの野郎だけは怒らせるな”』

手遅れでした。

SISUは翻訳不能フィンランド語。ニュアンスとしては「決して諦めない不屈の魂」。

撃たれても吊るされてもツルハシ担いだ死神は諦めることなく…。

本作、絶対タランティーノのお気に入りだと思います。

 

★実はヤルマリ・ヘランダー監督作はしっかり押さえておりました。

 

 

 

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