デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ゴキブリにゴミを見る目で見られたら。 殺人バグス~大量発生~

「シャイニング」の有名なエレベーターシーン。ドアの左右から溢れた血がドアが開くと同時に一気になだれ込み、東映の△マークが出そうな波しぶきを立てながら溢れ、濁流となって家具を押し流してしまう、あれ。

これ。


あの血の波ざっぱ~んがゴキブリになったと思ってください。

「殺人バグズ ~大量発生~」(2020年/ツイ・イエンロン監督)

ゴキブリをベースに蟻やら蜂やらカブトムシやらの遺伝子を混ぜ混ぜして作ったゴミ喰い蟲「ケプリ」。

コンピュータ制御でゴミを食べ尽くすケプリは環境問題の救世主。

開発者はPDR(Perfect Dirt Retreatment)テクノロジーの代表、ビクター・チェ。

チェは自ら指揮を執って大量のケプリを特殊大型船に詰め込んで公海へ。

乗っているのはチェと秘書とPDRの研究員、そしてM国の警備隊とC国の操舵クルー。

…という冒頭の設定説明で疑問符山積み。

まず何でゴミ問題の解決方法がゴキブリなのよ。普通ゴミ処理ならバクテリア系微生物にならないか。

もう「CGで大量のゴキブリ出したい」から逆算した設定としか思えません。


あとこの船は何を目的に建造されてどこに何しに行くんだ?

広報活動か、各国に対するプレゼンか契約促進か。

字幕では「広報稼動」になっていましたが広報活動でタンカー一杯のゴキブリ運ぶ必要はないだろう。更にMissionとして「Transport KHEPRI to complete garbage removal operations.(ケプリを輸送し、ゴミ除去作業を完了させる)」という英語字幕が(日本語字幕は華麗にスルー)。

ゴミ除去作業に行くのなら大量のケプリを積んでいるのも頷けますが、だったら目的地はどこだ?

もう「限られた空間で話を終わらせたい」という製作の都合から逆算された設定としか…。


あとこの船、PDRの社用船だろ(ほぼ移動ラボと言っていい設備と制御)。傭兵が警備しているのはいいとして、何で操舵クルーが雇われ中国人なんだ? 船長の妻が「私は船長の妻よ」なドヤ顔で乗船して言いたい放題言っていますが、力関係が分かりません。

目的不明、目的地不明、契約関係不明。

でまあ、このケプリがコンピュータの制御を離れ、暴走(秘書がM国のスパイで軍事転用を画策していた)…するのですが、最終的にケプリを束ねているのは皇后というすげー名前のついたAIで、こいつが「ゴミをなくせ」という命令から「人間がいなくなればゴミはなくなる。人間こそがゴミだ」という手垢のついた結論(「キャシャーン」から何年経っていると思ってんだ?)に達し、船内の人間皆殺しの指示を出し…。

安い、そして薄いぞ、中国。人も話もぺらっぺらではないか。

さんざっぱら火炎放射しておいて、最後に「火気厳禁」とか言われてもなぁ…。


いやまあ重厚な人間ドラマとかパニック描写とか微塵も期待してはいないので、適当に気色悪いCGが楽しめればそれで良いのですが(でもゴキブリの波に呑まれたら死ぬという記号的演出は承服しかねる。ちゃんとゴミとして喰い散らかされた描写を入れてくれないと)。

これ、ゴキブリじゃなくてバクテリアにして、最終的に船が沈んで一部タンクから流出したバクテリアが近所の海岸に流れ着いて、海水浴に来ていた観光客が次々白骨になっていく、というエンディングだったら拍手喝采でした。

★ご参考~多分同じ箱の中国産パニック映画。

★バグ絡み3選。

★そう言えばこんなのも…

 

 

 

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★本日のTV放送【13:40~テレビ東京午後のロードショー