「おじいさん、何を植えているんですか?」
「梨じゃよ」
「まだ大分かかるでしょう?」
「そうさな、10年はかかるかな。10歳の孫があんたくらいの歳になったらいい梨が実るじゃろ」
“この老人ですら10年後の夢を見ることができる。しかし俺は明日の夢をみることさえ・・・”
去年のこの日は「日本のいちばん長い日」を取り上げましたが、今年はこれを。
「人間魚雷回天」(1955年/松林宗恵監督)
以前ご紹介した「人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊」が発案者・黒木中尉(役名は大里中尉)の目線から描かれていたのに対し、こちらは完全に海軍予備学生目線。
深度はおろか速度すら分からない「小型潜水艇」とは名ばかりの鉄の棺・回天。
敵に突っ込む前に訓練でバタバタ仲間が事故死していく中で「その日」を迎える若者たちの心情を細やかに綴っています。
主演は木村功(舘ひろしに似てる)、宇津井健(棒読みが初々しい)、岡田英次(名演!)。
木村が海岸で恋人・早智子(津島恵子)の手を取りながら“あり得ない(でも戦争がなかったらあり得たかもしれない)”夢を語る場面はもはやファンタジーと呼んでいい名シーンです。
景気良く突っ込んでいくゼロ戦特攻隊に比べ、回天特攻隊には閉塞感と悲壮感しかありません。閉所恐怖症の人は着弾の前に発狂するんじゃないかと思います。
ゼロ戦に比べ比較的マイナーな存在の回天ですが、実は更にマイナーな「伏龍」(潜水服を着た人間が棒付魚雷を持って体当たりするという上陸用舟艇の水際迎撃部隊。写真の模型参照)ってのがあります。
詳細が謎なので誰か映画化してくれないでしょうか。
■追記・・・なんと松林監督が本日(15日)お亡くなりになったそうです。89歳。心不全。ご冥福をお祈りいたします。