比較に意味が無い事は分かっています。
分かっていますが、幼生ギャオスを波しぶきを立てながら仁王立ちしたガメラが片手で叩き落とした瞬間、平成ゴジラの不甲斐無さに対する溜飲がゴクリと音を立てて下がったのはまぎれもない事実。
「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995年/金子修介監督)
始まりは84年のリメイク「ゴジラ」(橋本幸治監督)の常軌を逸したつまらなさ(劇場で爆睡して、リマッチでまた爆睡した)。
続く「ビオランテ」は若干持ち直したものの、その功績の大部分は伊福部サウンドの完全復活という“嬉しい誤算”に因るものでした。
その後、2001年に「大怪獣総攻撃」(金子修介監督)が登場するまで連綿と子供騙し路線が続くわけですが、ガメラ公開時は「スペース・ゴジラ」と「デストロイア」の狭間。
もう大きいお友達は窒息寸前、絶滅間近というタイミングで放たれた救世主でした。
脚本は自衛隊語らせたら日本一の伊藤和典。「パトレイバー」で培った“リアルで固めた現実社会に異物を放り込むシミュレーション”を全面展開。
で、実質主役の特撮監督・樋口真嗣。ボール紙だけでMAT基地を作った男に相応の制作費渡したらどうなるか。
伊福部サウンドとは全く違う、しかし、これぞ特撮伴奏という音楽を作り出した大谷幸の力添えも忘れてはいけません。
藤谷文子、中山忍の棒読み演技を彼岸の彼方に吹き飛ばす演出力は“日本三大ロリ監督”の一角を担う金子監督の独壇場。
特撮映画の歴史を変えた奇跡の1本です。
※余談ですが、平成ゴジラで一番好きなのは「大怪獣総攻撃」ではなく、釈版メカゴジラだったりします(笑)。