『数学できんが何で悪いとじゃあ!殺したるぅ!』
これは日活によるリメイク版(澤田幸弘/石井聰亙共同監督。浅野温子のデビュー作)のキメ台詞ですが、実に説明的ですね。オリジナルにこんな台詞はありません。
(1977年/石井聰互監督-翌年の日活版は石井聰亙監督-)
リメイク版は“興行”という大人の都合から、“弱肉強食の受験戦争から脱落し自殺した生徒を教師が負け犬と罵倒した”事に端を発する社会派ドラマにされてしまいましたが、オリジナルは違います。
と碌な説明もなくテンションアゲアゲ。
ショットガン持って教室に乱入して問答無用で教師射殺。
リメイクは尺の都合上“逃亡→篭城”となって、画も緊張感もガクっと停滞してしまいますが、オリジナルは“短期決戦逃走”となるので、緊張感を保ったままカメラが走り続けます。
23分の8mmと94分の劇場版を比べても意味ないですが、狂映舎と日活が目指した方向がまるで合っていなかったという事は良く分かりました。
この“爆発”の部分だけを切り取った本作の翌年に製作されたのが、
孤独な受験生(3浪!)のどん詰まりな日常がこれでもか!と描かれます。延々。
見事なまでに風采の上がらない顔だち、友と呼べる友もなく、分刻みのスケジュールを立て、自分を鼓舞するスローガンを貼り、誰にも相手にされず、明日の希望も保証も無い。
何もかもが面白くない、ムカつく。そしてある日突然・・。
「高校大パニック」に充満していたエンターテイメントがごっそり欠落。カタルシス・ゼロ。当時、石井監督にどのような心境の変化があったのか知る由もありませんが、振り幅が極端すぎ。
8mmの質感と2作に共通する単語“ラジオ講座”が妙に懐かしくはありました。