『死出の道行きね。私たち』
鍾乳洞に響く芥川也寸志の“道行のテーマ”。奥行き、厚み、深み、「砂の器」の“宿命”に匹敵する名曲です。
この作品の凄いところは、“祟りを利用した連続殺人”というミステリーではなく、本当の祟り、怪談として描かれているという事でしょう。
なので、伏線が無いとか、動機が希薄とか、物証が無いという批判は完全に的外れ。
燃え盛る多治見家を嗤いながら見下ろす8人の落ち武者の姿こそ、本作の本質です。
96年に東宝が本家の意地とばかりにリメイクしておりますが、トヨエツ、浅野ゆう子、男闘呼組と小さくまとまった爽やか路線。
市川昆には申し訳ないですが、こと八つ墓村に関しては松竹の圧勝。
ミスキャスト呼ばわりされる事の多い渥美清=金田一ですが、あくまでショーケンが主役という視点で観れば、いい感じに嵌っていると思います。
都井睦夫の津山30人殺しにインスパイアされた多治見要蔵(山崎努)の大殺戮シーン、JACによる大滝登り落ちシーン(ファイト1発!)、森美也子(小川真由美)の「オーホッホッホッホ」シーン(チビるほど怖い)など見所満載。
「震える舌」と並ぶ野村ホラーの傑作です。