『何だか世の中から孤立して、この広~い宇宙に三人だけみたい』
『いいじゃないか。俺たち三人だけで』
タイトルは「神戸浩万歳!」にしようか迷いましたが、やはりここは風吹ジュンでしょう。
駄目男と菩薩はセットが決まり(宇宙の法則です)。後光が射します観音菩薩。
「無能の人」(1991年/竹中直人監督)
かつて人気漫画家だった助川(竹中直人←勿論、原作者つげ義春自身)。
娯楽漫画は描かないと筆を折り、様々なビジネス(?)を立ち上げるもことごとく失敗。
やがて“石”が愛好家の間で美術品として高値取引されている事を知り、“石屋”を開業しますが・・。
助川の妻を演じる風吹ジュンがエライ事チャーミング。髪を伸ばして束ねただけの“なんちゃって若い頃”も無理なく素敵。
そして、石の専門家・石山石雲(マルセ太郎←怪演)の弟子・山川軽石を演じるのが神戸浩。
顔がぱっと思い浮かばないかもしれませんが、その人類を越えた演技は一度見たら簡単に忘れられるものではありません。
神戸浩と言えば“竹中直人の会”でなくてはならぬ調味料兼スパイス兼毒薬。かつての“大人計画”における松尾スズキと温水洋一のような関係です。
石屋、鳥屋、古本屋…。“ダメに生きる”を否定しつつ肯定しつつ絶妙なバランスではみ出していく人間たち。
『何でなの? なんでこんな真似するのよ。あんたには漫画しかないのよ。ね、漫画描いてよ。注文なくたっていいじゃないの。漫画描いてよ!』
ふと周りを見渡せば豪華賢覧なエキストラ。
別にそこに座っている男が三浦友和でなくても、鈴木清順でなくても構わないわけですが、著名人がさながらウォーリーを探せのように・・。
竹中直人の第一回監督作を皆で祝福しているようで、監督のお人柄が偲ばれます。
★ご参考