『これでええ。思い通りや。この寺は本物か贋物か。わしの道連れやで』
舞い上がるリュート物質、爆発・炎上する妙顕寺(放送当時、本物の寺を燃やしたと思った視聴者から苦情がきたそうですが、責められません、笑えません。どう観ても本物です)。
最早説明不要、「京都買います」と並ぶ怪奇傑作群の頂点です。
「怪奇大作戦/第23話・呪いの壺」
(1969年2月16日放送/実相寺昭雄監督)
京都の資産家が次々と怪死。共通点はふたつ。ひとつは焼け焦げた視神経。もうひとつは古美術商・市井商会の優良顧客。
事件の裏には代々市井家の影として贋作を作り続けてきた日野家の存在がありました。
『このままいったらおとうの名前は永久に出ず仕舞いや。こんな事があってええ訳がない。許せん、絶対に許せん!!』
野暮なストーリー紹介はこれくらいにして、まずは実相寺カメラを堪能しましょう。
挨拶代わりの実相寺節が、事件直後の鑑識発表シーンでいきなり全開。
トレードマークの広角レンズは勿論ですが、「何故そこにカメラを置こうと思ったんだ?!」な変態アングル乱れ撃ち。
一転、キーパーソンである日野統三(←肺病病みの市井商会従業員)、市井信子(←日野の婚約者。従来のヒロイン像に蹴たぐりかます地味女)の描写になると「寄りすぎだぞ!」な大接写大会。
いずれも人物の一部が“隠れる”“見切れる”訳ですが、その印象は強く視神経に焼きつきます。
贋作師という名誉無縁な陰の存在にスポットを当てた脚本は石堂淑朗(←松竹ヌーヴェルヴァーグの立役者)。
渾身のミニチュア・ワークは大木淳。
チャンネルNECOの放送も怒涛の最終コーナーを回りました。本来なら、本作と「京都買います」の間にもう1本あるのですが、現時点では観る事ができません。
「畜生!畜生!畜生おぉう!」と壺を叩き割りながら叫び続ける贋作師(日野の親父)が印象的。