『どいつもこいつもキチガイだ』
北野武の初監督作としては勿論ですが、白竜という獣を野に放った作品として、その後のジャンル映画の重鎮を輩出した作品として、語り継がれるべき問題作です。
「その男、凶暴につき」(1989年/北野武監督)
思えば特報から異常な香り。
目伏の入ったたけし(ロッカールームの拷問シーン)の顔に「子供に観せるな、子供に観せるな」のリフレイン。
静かなバイオレンス。まるで合わせ鏡な刑事・吾妻(たけし)と人間凶器・清弘(白竜)。
白竜は登場直後、遠藤憲一をメッタ刺し。子分(ゲイ)の1人に寺島進。仕える主人に岸辺一徳。
嗚呼、皆、若くて細面でシュっとしている。痩せてるって美徳なのね(海より深く反省)。
初監督作にして死への憧憬がひしひし。タナトスが舞っています(脚本、野沢尚だったのか…)。
正直、北野作品はあまり肌に合わないのですが、本作と「3-4X10月」と「ソナチネ」は別格。共通点はエンタに走らない甘い死臭。
エピローグはフリードキン・リスペクト。
※参考:「その男、凶暴につき…。L.A.大捜査線/狼たちの街」→2009年1月3日