『小畑さん、あなた悔しくないの?! どんなに卑怯で、どんなに手前勝手でもあなたは人間よ!』
こういう叱咤激励は嫌だなぁ(笑)
「ゲゾラ ガニメ カメーバ 決戦 南海の大怪獣」
(1970年/本多猪四郎監督)
タイトルだけ見ると、多々良島みたいな所で巨大化したイカとカニとカメが、
「一番強いのはオラだべさ(イカ墨ブー)」
「バカこくでねえ、オラに決まってるべさ(泡ぶくぶくぶく)」
「別の会社じゃ主役張ってるカメがいるの知らねーだか」
と小競り合いを繰り広げる怪獣無法地帯な内容を想像してしまいますが、違います。
何と本作は「吸血鬼ゴケミドロ」と同じ箱に入る“侵略SF”なのです。
木星探査用ロケットに付着して地球にやって来たアメーバ状の宇宙生物。
単なる単細胞生物かと思いきや、しっかりと侵略の意思を持ったエイリアン。
こいつに寄生されると、意識を乗っ取られた上にパワー満開の生物兵器に早変わり(「ヒドゥン」ですな)。
南洋のセルジオ島は、ここを観光の拠点にと考える開発会社とフリー・カメラマン、生物学者に産業スパイ、島の祈祷師に若きアベックが入り乱れて大騒ぎ。
冒頭の台詞は、アメーバ野郎に肉体と精神を乗っ取られた産業スパイ・小畑(佐原健二)にアジア開拓株式会社宣伝部員の星野アヤ子(高橋厚子)が放った一言。応援しているようで全く誉めていない罵詈雑言が堪りません。
怪獣は最初に登場するゲゾラのデザインが素晴らしい。
人が入る着ぐるみタイプなので、当然二足歩行になってしまいますが、周りの手足がうまい具合に脚部を隠し、頭部の不安定な前後運動と相まって、一瞬“操演”かと思う出来栄え。
ここに“見上げる”“見下ろす”高さ強調のカメラワークがいい感じに加わり、特撮画像としても屈指の仕上がり。
バラン、ドゴラと並ぶ“デザインは最高なのに地味で華が無いためにあまり顧みられる事の無い”怪獣の一体です。
後半を受け持つのが、ガニメとカメーバ。
ゲゾラほどのインパクトはありませんが、2匹同時という数の理論でこれをカバー。
※ゲゾラは途中退場なので、ポスターやジャケットのメインビジュアルになっている“カメーバをあやすゲゾラを心配そうに見つめるガニメ”(写真下)という絵柄は劇中には存在しません。
因みにカメーバは「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」で、“九十九里浜に打ち上げられた死体”として無言のゲスト出演を果たしています。
※参考:「侵略SFだったのか! 吸血鬼ゴケミドロ」→2008年7月24日