これはミュージカルではありません。役者が激情に駆られて思わず歌ってしまっただけです。
殴る、蹴る、歌う、踊る、全てが同じ次元の肉体言語。
あばれはっちゃく三池、純愛山河の中腹に白兵戦を挑む異端のロマンチスト。
「愛と誠」(2012年/三池崇史監督)
妻夫木聡31歳高校生。アリです(笑)。
揉め事になった時の嬉しそうな顔が溜まりません。クローズ小栗の一杯一杯な顔に比べて何たる余裕。
この“暴力だ~い好き!”な笑顔は歴代大賀誠にはなかった清々しさ。
対する井原剛史48歳高校生の振り切りぶり!
『用心棒ちゃう! 恋の奴隷、座王権太17歳じゃ!』
登場ソングは「狼少年ケン」。このキャラは是非スピンアウトしてカオルちゃん(竹内力17歳)と対決してほしい!
そして何と言っても本作のキモは“電波系トンデモ勘違い女”という新しいキャラを授かった早乙女愛(武井咲)。
清廉なこと天使の如き…な原作のキャラを100万光年の彼方に吹き飛ばす破壊神の降臨です。
高度経済成長期と言うよりは戦後の闇市に近い新宿東口、クローズが進学校に見える花園実業、誠を追って花園に転入した愛を双眼鏡で見ながら「こ、このままでは早乙女くんが!」と青葉台高校の制服を詰襟に着替えただけで花園へ転入してくる岩清水弘(斉藤工)、羞恥の衣をまた1枚脱ぎ捨てた安藤サクラ(ガム子)…タガが外れはずれまくっています。
振り付けパパイヤ鈴木…完全に確信犯的でしょう(それでも市村正親が踊ると妙にキレのあるダンスになるから不思議)。
では、これは「愛と誠」ではないのか? 間違いなく「愛と誠」です。今の時代に梶原文学を映像化しようとしたら、ドッロドロな大映メロドラマにするか突き抜けた(名状しがたき)“何か”にするしかありません。
設定をきちんと70年代前半にしたのも吉(「狙われた街」チックな夕日のセットがまた…)。
痛快昭和歌謡時代劇です。