田舎道を走る1台のバン。中には大学生の男女グループ。若者らしい他愛の無い会話。
ええっと、どいつがタッカーでどいつがデイルだ?
途中、彼らを追い越した車。中からはジモティーらしき強面な田舎者二人組の鋭い視線。
“給油ラストチャンス”の看板が出ている田舎の外れのスタンドに立ち寄ると、ここでもさっきの田舎者二人組が若者たちに不気味な視線を…。
もうどう見ても“都会の若者が田舎に来てヒドイ目に遭う”ヒルビリー・ホラーの典型的出だしですが…。
御紹介しましょう。髭面で巨漢で強面の田舎者がデイルくん(←劣等感の塊)。一緒にいる友達想いの田舎者がタッカーくんです。
「タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら」(2010年/イーライ・クレイグ監督)
タッカーとデイルは念願の別荘(どう見てもただの廃屋)を手に入れ、その手入れを兼ねてバカンスにやってきました。
近くの湖で夜釣りを楽しんでいる時に怪我をした大学生グループの女の子アリソンを助け、別荘で介抱。しかし、それを目撃した仲間たちが、
「なんてこった、アリソンが殺人鬼にさらわれてしまった!」
と勘違い。代表1名が恐る恐る二人の別荘を偵察に…。
タッカーが丸太をチェンソー切っていると中に蜂の巣が。驚いたタッカーはチェンソーで蜂を追い払いながら全力疾走。これが見事にレザーフェイスのチェンソー・ダンスになっており、偵察に来ていた大学生の眼には「殺人鬼が追いかけてくる!」
慌てて逃げ出したら、目の前に突き出た倒木があって勝手に串刺し。
ここから偶然と勘違いと手違いと不幸がミルフィーユのように折り重なって若者たちは次々死体に…。
ヒルビリー・ホラーのお約束を逆手に取ったブラック・コメディなのですが、この邦題からはその雰囲気がまるで伝わってこないのが残念です。
原題は「Tucker and Dale vs Evil」。
勝手な思い込みで相手を敵と看做し、いきなり攻撃を仕掛けてくる都会人グループこそEvilというわけです。
SXSW映画祭2010(米テキサス州オースティン)ミッドナイト部門観客賞
2010年ファンタジア国際映画祭(カナダ・モントリオール)審査委員賞
2010年FANTASPOA 2010(ブラジル)監督賞
2010年シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)パノラマ部門作品賞
2011年SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(日本)観客人気投票1位
埋もれさせるにはちと惜しい快作です。