デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

吐露と檸檬とうふふふふ。 あの夏で待ってる

イメージ 1
「映画の内容は私に任せて。丁度ルーカスのために書いておいたホンがあるわ」

「ハリウッド級!?」

「ってか、勝手に書いていただけですよね?」

「うふふふふ」

いきなり暴論ですが、本作鑑賞の際は、基本設定であるSF的状況を全て無視して掛かる事をお薦めします。

本作のキモは、登場人物全員が己の(恋愛)感情をストレートに吐露すること、そしてそれが必ずしも叶うわけではないこと、でも気持ちを押し込めるよりはたとえ玉砕してもぶつかって行った方がマシだ、という決心に至ること、だと思います。

あの夏で待ってる

(2012年1月-3月放送/長井龍雪監督)


順番が逆になってしまいましたが、昨日ご紹介した「OVAとある科学の超電磁砲(のOP)」を手がけた長井監督の「8mmフィルムの郷愁」譚。

8mm独特の(ホワイトバランスの崩れた)画調を強調したOPが実に“いい感じ”です。

舞台は信州・小諸。高校1年生の霧島海人は祖父の遺品である8mmカメラ(多分フジカシングル8)がお気に入り。

ある夜、“高感度フィルム”の試し撮りのためやってきた湖で光る飛行物体を目撃。次の瞬間、閃光と衝撃に貫かれて堤防から落下。その手を掴む美しい手。

翌朝、目覚めると自宅。怪我をした様子も無い。夢か…。

学校に行けばいつもの面々。悪友の石垣哲郎、谷川柑菜(カンナ)、北原美桜。

よし、夏休みは海人のカメラで自主映画を撮ろう。そう言えば、今日、3年にすげー美人の転校生が来たらしい。彼女も誘おう。

石垣の強引な申し出に何故か二つ返事の転校生・貴月イチカ。一緒にいた山乃檸檬先輩も映画作りに参加する事に。

で、ご想像の通り貴月イチカが宇宙人で、着陸の際、海人を巻き込んで大怪我をさせてしまった張本人であるわけですが、この辺りの設定が超テキトー。

海人と同じ高校に来たのは、怪我をさせてしまった海人が心配で…って事で無理矢理納得するとして(2学年も上のクラスに来た必然性は無視します)、住所不定・所持金ゼロの女がどうやって編入手続き踏んだんだ。

私服1枚持っていないという設定なのに何故制服を着ている? 普通、制服は支給品ではなく自腹購入だぞ。仮に支給されたとして、それまで着ていたのは宇宙服なんじゃないか。

イチカが連れている(恐らくは防御と計算と通信を兼ねている生体コンピュータの)りのん(写真2枚目。物凄く可愛いが、どこからどう見ても地球外生物)を誰も怪しまないのは何故だ?

なんて事を考え始めると、疑問符土石流状態になって頭がフリーズしてしまいます。

ここはまるっと無視して、“変化の無い日常に異分子が混入することによって、恋愛感情のバランスが崩れる”というビリヤードの最初の一手的状況のみを認識するに留めましょう(自分を偽っていないか?…大丈夫、問題ない)。

逡巡と葛藤はありつつも、全員が己の感情を偽る事無くぶつけまくり砕けまくる様が美しくも痛々しい。

特にカンナ(写真3枚目4枚目)がなあ。この娘には幸せになってほしい。本当に「3年後に後悔させてやる」くらいいい女になってくれ。

恋愛話に絡まないにも関わらず、何故か要所要所で場面をさらうのは、謎の先輩・山乃檸檬

石垣の姉(既婚者。くーだらない事で旦那と喧嘩しては里帰りしている)とは、高校の先輩・後輩の間柄のようですが…。

檸檬! あんたまだ高校生やってたの?」

永遠の17歳ですから。うふふふふ」

語尾には必ず「うふふふふ」という怪しい5文字。神出鬼没。訳知り。主人公らが行動を躊躇する場面には必ず登場してヒントを与え、時に後押し。

いやあ、最終回でその正体が明かされた時は、「うわ、そんなんアリか。でも何か盛り上がるな。何だこのカタルシス…」。

終わってみれば深く印象に残っているのは檸檬先輩ただひとり。

もうこの人が色々な高校を渡り歩いて事件を解決する“美少女版Xファイル”をスピンオフとして作ってください。