デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

今後も救世主たらんことを…。 東のエデン(TV~劇場版)

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閉塞した日本を救え。方法は問わない。支度金は100億円。

必要な要求はノブレス携帯を通じてコンシェルジュであるジュイスJUIZ)に申請。経費は携帯にチャージされた電子マネーから引き落とされていく。

申請は例え「日本にミサイルを撃ち込め」というものであっても、物理的に実現可能なものであればそのほとんどが受理され実行される。

ゲームの参加者(セレソン)は12名。各セレソンの申請は受理・却下に関わらず全セレソンに通知される。

12名の内1名はサポーター。任務の放棄、逃亡、私利私欲による金銭使用が認められたセレソンや日本を救えぬまま残金がゼロになったセレソンにはサポーターによって的確な死がもたらされる。

誰がサポーターなのかはゲームマスターであるMr.OUTSIDEしか知らない。

設定は満点です。予断を許さない展開もなかなか…ではあるのですが…。

東のエデン(2009年4月-6月放送、2009年9月劇場版総集編公開、同11月劇場版 The King of Eden公開、2010年3月劇場版 Paradise Lost公開/神山健治監督)

データが長くなってすみません。ここまでがひと繋がりなので、まとめてひとつの作品と看做してレビューします。

卒業旅行でワシントンDCを訪れた森美咲(もりみが苗字で名前がさき)は、右手に拳銃、左手に携帯を持った全裸で記憶喪失の青年と出会います。

どうやら彼は自らの意思で記憶を抹消したらしい…携帯には記憶抹消前の彼からのメッセージとして自宅の地図情報が。

指定された部屋の中は銃火器が一杯。クローゼットの中には複数のパスポート。

「うええ、俺ってジェイソン・ボーン?」

パスポートの中からひとつをチョイス。「よし、俺は今から滝沢朗だ」。

咲と共に帰国の途についた滝沢。飛行機から見下ろす日本には幾つかの大穴が。それは日本に打ち込まれた10発のミサイルの爪痕。そして黒煙噴き上げているのが11発目の弾痕。

日本に何が起きているのか? そして俺は…誰だ? 出だしはすこぶる快調です。

次第に明らかになるセレソンゲームの全貌、他セレソンのプロフィール、ゲームマスターであるMr.OUTSIDEの素性と滝沢本人の記憶抹消前の活動履歴。

TV版は、“戦後からやり直すため”に再度日本に打ち込まれた60発のミサイルを2万人のニート(のアイデア)が迎撃し、滝沢が日本の“王様”になる事を決意するまで。

劇場版総集編は、咲をはじめとしたサブキャラの面々の回想という形でこの流れを振り返るという趣向でまとめられたものなのですが、はっきり言って音声解説的横槍がうるさい!うざい!

回想するなら咲ひとりで十分。百歩譲ってみっちょん、おネエまで。その他の男キャラは邪魔。特に出番も活躍も少ない大杉と春日の過剰なはしゃぎぶりは作品の雰囲気をぶち壊しています。

劇場版 The Air Kingは放送最終回から半年後、再び記憶を消して行方不明になった滝沢と咲の再会を伏線撒き散らしつつ描く中継ぎ編。

劇場版 Paradise Lostで完結…という流れなのですが、何と言うか今ひとつすっきりしない残尿感の残る幕引きでした。

TV版から総集編、劇場版2作と一気に魅せる作りにはなっていたので、内包しているパワーはあるのですよ、間違いなく。

あちこち説明不足なのは仕方が無い…と言うか風呂敷広げっぱなし&逃げ切りが必ずしも悪いとは思ってはいないので、そこいらへんは特に気にしていないのです。

多分…“アガリを決め込んだ老人”と“ニート”という概念だけが先行して実態がよく分からない集団の対立構造に強烈な違和感を覚えてしまったのだと思います。

“時代の空気”がテーマのひとつになっているようですが、近未来として描かれた現代日本の病巣が既に(表現として)風化している、という事なのかもしれません。

時代を描くには登場人物も行動も紋切り型でステレオタイプ。リアリティという面で言えば限りなくゼロ。

作り手としては考え抜いた挙句の選択なんだろうと思いますが、話にのめり込むには障害の多いお話ではありました。

セレソンが持っている100億円までなら望みが何でも叶う夢の携帯(ノブレス携帯。写真3枚目)のデザインはやたらかっちょ良かったですね。

元々はNECが制作したコンセプトモデルの1つで、バイクユーザーのための携帯としてデザインされたものが基調になっているんだとか。本体背面にはバイクに取り付けるためのマウントを備え、走行中の振動や衝撃に耐える構造になっているそうです。そう言えば滝沢もバイクに装着して使っていました(写真4枚目)。

NECはi-Phoneから撤退したようなので、ガラケーとして一般販売してくれないでしょうか。欲しいです。