ベテランの顔芸が全てを浚う。 野蛮なやつら/SAVAGES
話としては大したこと無いのに配役が妙にツボ。役者の顔力と豪腕な演出力で長丁場を一気に押し切る力技エンターテイメント。
「野蛮なやつら/SAVAGES」(2012年/オリヴァー・ストーン監督)
植物学者のベンと元ネイビーシールズのチョンは大麻栽培ベンチャーで大成功。
カリフォルニアで悠々自適の生活を送っておりましたが、メキシコ系巨大麻薬カルテルが提携を強要してきたから、さあ大変。
全部投げ出して国外逃亡を企てますが、共通の(いや共用の)恋人オフィーリアを人質にとられて万事休す。
一旦は要求を飲みましたが、オフィーリアの拘束期間が1年と聞いて怒り心頭。絶対奪い返す。目には目を、だ。
麻薬カルテルのボスにサルマ・ハエック、その腹心にベニチオ・デル・トロ、ベン&チョンに便宜を図る一方、カルテルとも通じている悪徳警官にジョン・トラヴォルタ。
ほとんどこの3人の顔芸でもっているようなものです。
特にデル・トロ。生首ゴロゴロな汚れ仕事を一身に担いつつ、敵対勢力とも接触を図り、家庭では子供に厳しく妻にはDVな野蛮一番男です。
麻薬でストーンと言えば「スカーフェイス」ですが、ああいうギラつきは無し。
麻薬でデル・トロと言えば「トラフィック」ですが、あんな社会性も無し。
麻薬でトラヴォルタと言えば「パルプ・フィクション」ですが、あの手のお洒落感とも無縁。ちょっと時間軸に手を加えてみたり、スタイリッシュと言えなくも無いシーンがあったりもしますが、基本、別の箱です。
「パルプ・フィクション」と言えば、実はオフィーリアの母親役でユマ・サーマンが出演していたそうですが、編集でまるっと切られてしまったようです。残念。
当時66歳のストーンがこのような正統派映画を撮った事は驚嘆に値しますが、正直この人にこういうものを求めている訳ではないので、もっとギラッとグチョっと激しいストーンが観たかったです。