瞬間最大風速で世界を席巻した(ように見えた)Jホラーですが、もはや完全に搾りかすしか残っていない事が証明されてしまいました。
まあ、企画:秋元康で、配下にシニア・プロデューサー2名、製作総指揮2名、エグゼクティブ・プロデューサー1名、プロデューサー4名、アソシエイト・プロデューサー2名などという体制でまともなものが出来る訳ゃないのですが…。
お話は古い団地に越してきた一家(夫婦+娘・息子)が荷解きをしている所から。
主役は長女・二宮明日香(前田敦子)。荷物の中にひとつだけ古びた段ボール。
誰目線なのか全くわからない中途半端なPOVのような不安定カメラワーク。わざとだと思いますが結構イラつきます(演出としては失敗)。
毎朝、時間が止まったかのように同じ会話を繰り返す両親(勝村政信&西村尚美)はいい感じ。
明日香は高校生らしく、制服を着て学校に行くのですが、次のシーンでは介護の専門学校のような場所で講習を。
時間が経過したのかと思いきや、「まだ越してきたばかりで…」。
それらしいオチがあるにはあるのですが、全く説明になっていません。
各人の行動原理も変。
いくら授業で孤独死の話聞いた後だからって、誰が住んでいるのかも分からない隣の部屋に勝手に上り込むか?
現場清掃業者の男・笹原(成宮寛貴)が明日香に肩入れする理由も説得力無し(自分が事故って彼女植物人間にした事と、霊に憑りつかれた明日香を助ける事は何の関係もないだろう)。
番宣でネタバレしまくってましたが、邪気の本体はかれんぼ中の不慮の事故で命を落とした少年ミノルくん。
ここもさあ、ゴミ箱に隠れたのを業者が気づかずに焼却炉で…って説明があるのですが、そんな訳ねぇだろ。
ゴミの回収業者はゴミ箱ごと持ち去ってゴミ箱ごと燃やすのか?
開けるだろゴミ箱。んで移し替えるだろ。車に。その時に気づかず圧殺されてしまったというなら話は分かる。でもそのまま焼却炉はないだろ。
このミノルくん、向こうから寄って来たわけではありません。明日香が積極的にちょっかい出してなついちゃったんです(そりゃ憑りつかれるだろう)。
他の家族が実はアレで、というオチがあるので、弟の幻影を追い求めたと解釈できないこともないですが、だったらそれなりの描写をしないと。
明日香が精神的に壊れていく過程も中間描写がないので観客置いてきぼり。
神道の除霊は日本らしくてなかなか良い風情なのですが、これも描き方が中途半端。
除霊の効能が全く描かれないので、何のためにやっているのやらさっぱり。
映像マニュアルになるくらいきちんと手順を追った上で、対決の構図を際立たせれば純和風エクソシズムとして結構盛り上がるシーンになったのではないかと思うのですが…。
除霊中も「すべてが終わるまで絶対霊を(家の)中にいれては駄目」って言われているのに、何でのこのこドアまで行っちゃうかな。
笹原も何故、明日香がドアノブに手を掛けるまで黙ってみている? もっと早く止めろよ。挙句に彼女の声に騙されて自分で開けちゃうってどこまで間抜けなんだ?(「恐怖新聞」リスペクト…じゃないよな)
あと、これ「仄暗い水の底から」と何が違うんだ。セルフリメイクと言っていいくらい同じ話だろ。
「仄暗い~」はまだ観られるレベルでしたが、こっちはにっちもさっちも。
前田敦子の演技は普通。諏訪太郎が出て来ると和むなあ(刑事と言えば、この人)。