私ら世代にとって“壁ぬけ男”と言えば、キング・アラジン(下の写真右側)ですが、あちらは奇術師、本日の主役は科学者(変人以上マッド未満)です。
50年代SFの珍品(いや、この時代のSFの大半は珍品なのですが)のひとつ。
「4D-MAN/怪奇!壁ぬけ男」(1956年/アーヴィン・ショーテス・イヤワースJr監督)
なんとかマンという名前のヒーロー(アンチ含む)の中で最も間抜けなネーミングかもしれません。
因みに同じ監督、制作、脚本、音楽スタッフが2年後に作ったのが「マックィーン絶対の危機」。
金属と非金属の分子的融合(鉄の塊に鉛筆通す、とか)を研究している変人科学者(弟)と真面目堅物な科学者(兄)。
マリックさんならホイホイやってしまう分子融合ですが、当時は画期的発明(いや、今でも画期的か)。
この兄弟と女性科学者の三角関係と研究所内の待遇に関する研究所所長との確執、同僚の不満という、割とどうでもいい話が30分ちょい。
話の流れ的に“人体実験かましてエライこっちゃ”になるのは弟かと思いきや兄の方。
鉄に鉛筆刺そうとしたら勢い余って手が貫通してしまうシーン(下の写真左側)はちょっとびっくり。
人並み外れた強い脳波を持つ兄は、機械の媒介を要さずに物質をすり抜ける事ができる“壁ぬけ男”に。
ただ、この技、使うたびにとんでもないエネルギーを消費。寿命を削って老化を促進してしまいます(恐怖新聞が朝昼晩来るようなものか)。
しかし、便利な事に、他人の精気を吸い取る事で“充電”が可能。
吸われた相手は干からびた老人となってあの世行き。この辺り「スペース・バンパイヤ」の先取りと言えます。テレビ放送時のタイトルが「SF4次元のドラキュラ」だったのはこのシーンのせいでしょう。
暴走する生命吸引器と化した兄を止める事はできるのか。
“余韻って何?”な唐突エンドに面喰いますが、50年代の味わいに満ちたSFだと思います。
※参考:50年代狂った科学者モノと言えば…