シリーズ屈指の緊迫感と脱力感を同時に繰り出す離れ業。
これは最早シュール・リアリズムと呼んで良いのでは…。
「西部警察PARTⅢ/第32話・杜の都激震!!~第33話・仙台爆破計画」(1983年12月18日・25日放送/小澤啓一監督)
実験用高濃縮ウランが強奪された!(リーダーは後の湾岸署・袴田課長だ!)
更に犯人グループは、原子物理学の教授と息子を拉致。アホでも分かる彼らの目的は…原子爆弾の製造。
潜伏先は杜の都・仙台。特命を受けた西部署メンバーは一人残らず仙台へ。
仙台署が用意してくれた宿舎兼指揮所はワシントンホテル。
『え? ワシントンホテル? ワシントンホテルってあの誰でも知ってるワシントンホテル?』
さすが一平、タイアップ企業名連呼の法則を忠実に守っています。更に入り口で、
『うっわー! ワシントンホテル!』
わかったから(笑)。
で、まあ、色々あって、教授親子は無事救出されますが、原子爆弾は既に完成し、仙台市内に設置済み。起爆は5時間後という最悪シナリオ。
脅迫無線の逆探知であっさり犯人グループの移動アジトであるバスを発見した大門軍団ですが、追跡中にバス内の爆弾が誤作動で爆発。犯人全員黒焦げ。
なんてこった! しかし、運の良いことに一人だけ別行動をとっていた奴が!
原爆に繋がる最後の手がかり…だったのですが、逃走中にハンドル操作を誤って日産サニー宮城ビルの屋上からスカイハイ・ジャンプ!!
ダイイング・メッセージは「水の中探せ…」
ここで団長の灰色の脳細胞がスパコン並みの演算を開始。
『給水塔…給水塔の中だ!』
待てい! その根拠は何だ。貯水池かもしれないし、屋外プールかもしれないじゃないか。なんて疑問を挟んでいる余裕はありません。団長が給水塔と言ったら給水塔なんです。
で、また色々あって遂に爆弾発見! 場所はエンドー・チェーンのお客様駐車場設置の給水塔。タイムリミットは7分!
困ったことに給水塔のある駐車場ではチャリティ・コンサートが(歌っているのはチェリッシュだ)。大門軍団の只ならぬ気配にざわつく観客。騒がれたら大パニック必至。どうする?
『なんとかしろ!』
この史上最大の無茶振りに「わかりました」と応えた鳩村刑事。やにわにステージに降り立つと、ギターを抱えて熱唱!
撃って走って歌える地方公務員、鳩村が聴衆の眼を引きつけている間に団長は爆弾解体に挑戦!!
しかし、開けてビックリ、コードびっしり。難易度高え!
この仙台の(と言うか日本の)命運掛けた解体作業と鳩村オンステージが同時進行…この世のモノとは思えません。
まあ勿論、ハッピーエンドな訳ですが、手に汗握りながら笑い呆れる素晴らしいエピソードでした。