『ねえ岡部、相対性理論って、とてもロマンチックで、とても切ないものだね…』
次に逢う時は他人。ひとりは全ての記憶が書き換えられ、ひとりは全てを覚えている。
こういう台詞がひとつあるだけで、アイデア勝負のストーリーが人間ドラマに昇華されます。ゲーム未プレイなのでオリジンがどこにあるのか分かりませんが、この台詞考えた人は称賛に値します。
「STEINS;GATE[北米版BD-BOX]」
(2011年4月-9月放送/佐藤卓哉監督)
総勢3名の発明サークル「未来ガジェット研究所」のリーダー・岡部倫太郎(大学生で18歳という設定ですが、見えねぇ見えねぇ)は、研究所メンバー(ラボメン)であり幼馴染の椎名まゆりとラジオ会館(取り壊し前の旧館ね)へ。
目的はドクター中鉢によるタイムトラベルに関する講演会でしたが、岡部はここで血だまりの中に倒れている牧瀬紅莉栖(まきせくりす。脳科学専攻の天才少女。17歳という設定ですが見えねぇ見えねぇ)を発見。
この事をもうひとりのラボメンである橋田にメールで知らせた所、強い眩暈に襲われ、気が付くとラジ館屋上には人工衛星のようなものが突き刺さっており、周囲は警察に封鎖されておりました。
牧瀬紅莉栖が刺殺されたというニュースはなく、確かに聞いたドクター中鉢の公演は直前にキャンセルされていた…現実と記憶に乖離が…何かが違う…。
最初はとっつき難いかもしれません。
主人公・岡部(自称:狂気のマッド・サイエンティスト、鳳凰院凶真)は厨二病をこじらせた挙句、妄想入っちゃってますし、相棒の橋田はアキバ系オタク満開。
巨大掲示板用語が当たり前のように日常会話に混じってきます。
が、お話が転がり出す3話目くらいから堰を切ったように面白くなります。あとは終わりまで一気呵成疾風怒濤。
偶然が重なって過去にメールを送るシステムを発明してしまった岡部たちは“実験”と称して過去の自分(もしくは近親者)にメールを送信。
ひとつひとつはたわいのない内容でしたが、バタフライ効果で未来(つまり現在)が微妙に変化。
世界線が変わるたびに全人類の記憶が上書きされるので、現在の状況に疑問を感じる人間はいません。ただひとり、移動前世界線の記憶を保持する特殊能力を持った岡部を除いて。
改変の累積は絶望的な未来を創出。仲間の死という悲劇を回避するために、岡部は紅莉栖の協力のもと、データ化された現在の記憶を携帯を通じて過去に送る(過去の自分に現在の記憶を上書きする)タイムリープを敢行。
しかし、何度やり直しても経緯が変わるだけで悲劇は回避できず。一体どうすれば…。
過去に戻る度に何も知らない紅莉栖に状況を説明し、信じてもらわねばならないもどかしさ。
「次に逢った時は覚えていないんだね。あなたが名前で呼んでくれた事…」
「忘れないで。あなたはどの世界線にいても一人じゃない。あたしがいる」
こんな頼りになるヒロイン、ちょっといません。
北米版BD-BOXは全25話をBD4枚、DVD4枚に収録した8枚組で6,500円程。