デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

殺伐という雲気、ささくれた景色。 暗殺

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『坂本君、人の上に立って号令するほど愉快なことはないの』

この男が本当にやりたかった事は何だったのか。

「暗殺」1964年/篠田正浩監督)


幕末を駆け抜けた知略家、清河八郎丹波哲郎。藩の後ろ盾も無しに幕府・朝廷を手玉に取った謎の男。


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左は坂本竜馬と。右は佐々木只三郎

本来なら“松竹ヌーベルバーグ”という潮流と共に語らねばならない1本ですが、偏差値貧乏な私にはちと荷が重いので、そこいらへんはまるっと割愛。

ただ、手を伸ばしたらかまいたちに切り裂かれそうな張り詰めた空気(とりもなおさず幕末の雲気)は、モノクロ映像のシャープさの中にきっちり蒸着していたと思います。

勤王でありながら佐幕に鞍替え…と見せかけて勤王に寝返り。

50名の予定だった浪士組を無秩序に膨れ上がらせ上洛。その日のうちに「将軍警備なんか嘘だぴょーん。今後は尊皇攘夷の急先鋒になるのだ!」と蹴たぐりかます二枚舌。


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大名行列にも臆さず突っ込んでいく浪士組(左)と寝返り宣言をする清河(右)

この心変わりに得心いかない(普通いかないよな)芹沢鴨の一派が離脱。

清河幕府を立ち上げる”とまで豪語した清河の本心はどこにあったのでしょう。

本作は清河を主役に据えながら、その心情には決して寄り添いません。その行動を追えば追うほど謎。

板倉勝静小沢栄太郎)同様、「奇妙なり、八郎」と呟くしかありません。

それでもお話が破綻していないのはひとえに丹波の存在感故

何を考えているのか分からない、という属性をキャラとして自然に馴染ませているので、そこに疑問の目が行かないのです(だって丹波だし、で納得してしまう)。

清河暗殺の実行犯・佐々木只三郎木村功。頬がコケ、双眼だけが大きく光っている不気味さが暗殺者の偏執さを際立たせています。


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清河の野望の行く末は…。
 


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