『MAX.…My Name is MAX. That’s My Name』
“ドラマとは名乗りである”…曼荼羅畑が繰り返し主張するテーゼですが、本作もまた名乗りで〆られておりました。
27年ぶりに蘇った鋼鉄と爆炎の神話。
「マッドマックス/怒りのデス・ロード」
(2015年/ジョージ・ミラー監督)
最小限の説明とサイレント一歩手前まで削り込んだ台詞。全編フルスロットル数珠繋ぎなアクションの釣瓶打ち。
「ブラックホーク・ダウン」が試みた実験を更に展開させた破綻の表面張力。“走っているだけ”“行って帰ってくるだけ”な構成に批判もありますが、押し切った潔さを讃えたいと思います。
冒頭、いきなりクラッシュするV8インターセプター。あまりの活躍場面の無さを嘆きたくなる気持ちは分かりますが、前シリーズで爆発大破したインターセプターが一瞬でも拝めた事を歓びましょう。
それにマックスは自身のアイデンテイティを構成するものを一度全て失う必要があったのだと思います。
個人的白眉はドーフ・ワゴン。4台の太鼓と火炎放射ギター、そして無数のスピーカー、ウーファーを搭載した爆音BGM再生トラック。
戦場での士気高揚・鼓舞が目的ですが、生効果音で思い出すのは「地獄の黙示録」(ワルキューレの騎行)。
ワルキューレ(バルキリー)のお仕事は、戦死した勇者の魂を天上の宮殿ヴァルハラへ導く事。
『お前の魂は英雄の館へ俺が運んでやる』
(And I,Myself ,Will Carry You To The Gate Of VALHALLA)
イモータン・ジョー(お元気でしたかトーカッターさん!)のこの台詞は本作の神話性を裏打ちしています。
ウォーボーイズの特攻精神を見るとVALHALLAをYASUKUNIに置き換えた方が日本人的には理解しやすいかもしれません。
主役となる車がこちら。WAR RIG(字幕はウォー・タンク)。
外界からやって来た存在の意味を見失った(擬似的な死を体験した)男が試練(親殺しの加担)を経て人間性(名前)を取り戻し去っていく。マックスは英雄であると同時にマレビトでもあったのでしょう。
片腕欠損のシャーリーズ・セロンと記号的アイテム「2連ショットガン」
食傷寸前のアクションの佃煮。隠し味に古今東西の神話の数々。
BDの5.1chは圧倒的。ご近所迷惑を事前に謝罪してでも爆音再生で観る事をお薦めします。